本日の記事、ざっくり言うと・・・

  • H27に改正された「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」について、復習する

今回は、先日同一労働同一賃金ガイドライン案を紹介したこともありますので、現時点の「同一労働同一賃金」に似たルールである、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」の復習をしておきたいと思います。

パートタイム労働法に規定されている「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」とは、就業の実態が「通常の労働者と同じ短時間労働者」については、すべての待遇について通常の労働者と同じ取扱いがなされるべきであり、そのような場合の差別的取扱いの禁止を規定したものとされています。

すなわち、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものを「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」として、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならないものとしたものです。

その判断に当たっては、具体的には、以下の1.及び2.の事項について行われます。

  1. 職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一であること。
  2. 人材活用の仕組み、運用等が、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、当該事業所に雇用される通常の労働者と同一であること。

では、それぞれ、順にみていきましょう。

まず、1.の「職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一であること」とは、その業務の内容や当該業務に伴う責任の程度が同一であるかを判断することになります。

この「職務の内容が同一である」とは、個々の作業まで完全に一致していることを求めるものではなく、それぞれの労働者の職務の内容が「実質的に同一」であることを意味するものであるとされており、具体的には、「業務の内容」が「実質的に同一」であるかどうかを判断します。

業務の種類が同一であると判断された場合には、次に、比較対象となる通常の労働者及び短時間労働者の職務を業務分担表、職務記述書等により個々の業務に分割し、その中から「中核的業務」と言えるものをそれぞれ抽出します。

通常の労働者と短時間労働者について、抽出した「中核的業務」を比較し、同じであれば、業務の内容は「実質的に同一」と判断し、明らかに異なっていれば、業務の内容は「異なる」と判断することになります。

ここまで比較した上で、業務の内容が「実質的に同一である」と判断された場合には、次に、両者の職務に伴う責任の程度が「著しく異なって」いないかどうかをチェックします。

以上の判断手順を経て、「業務の内容」及び「責任の程度」の双方について、通常の労働者と短時間労働者とが同一であると判断された場合が、「職務の内容が同一である」となります。

次に、2.の「人材活用の仕組み、運用等が、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、当該事業所に雇用される通常の労働者と同一であること」とは、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものであることであり、職務の内容や配置が将来にわたって通常の労働者と同じように変化するかについて判断します。これは、差別的取扱いの禁止の規定の適用に当たっては、ある一時点において短時間労働者と通常の労働者が従事する職務が同じかどうかだけでなく、長期的な人材活用の仕組み、運用等についてもその同一性を判断する必要があるためとされています。

また、「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間」とは、当該短時間労働者が通常の労働者と職務の内容が同一となり、かつ、人材活用の仕組み、運用等が通常の労働者と同一となってから雇用関係が終了するまでの間であるとされており、同一となった時点から将来に向かって判断するものとされています。

以上を前提に、具体的には、通常の労働者と短時間労働者について、配置の変更に関して、転勤の有無が同じかどうかを比較します。そして、転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較します。

転勤が双方ともない場合及び、双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較します。まずは、職務の内容の変更の有無を比較し、同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、異同を判断します。

以上の検討を経て、「通常の労働者と同視される労働者」と認められた場合については、事業主は短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用のほか、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等労働時間以外のすべての待遇について差別的取扱いをしてはならないものとされています。

参考リンク

パートタイム労働法の改正について(厚生労働省HP)

MORI社会保険労務士・行政書士事務所(千葉県千葉市)では、日々生じる従業員に関する問題やちょっとした労働法に関する疑問、他社事例について、気軽に電話やメールで相談できる「労務相談」業務の依頼を受託しています。もちろんパートタイム労働者のサポートに関するご相談、給与計算(年末調整)、労働・社会保険、就業規則、各種許認可業務等も対応します。

toiawase