世界の労働基準監督署からVOL004:上野労働基準監督署

働き方改革推進法について、前回の通達のつづきを見ていくことにしましょう。今回は、年次有給休暇、中小企業の割増率と特例、産業医に関する部分について見ていくことにしましょう。

3.年次有給休暇に関する改正

年次有給休暇については、使用者は、年次有給休暇の日数が 10 日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。)から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないものとされました。

ここで、「基準日」とは、継続勤務した期間を6か月経過日(雇入れの日から起算して6か月を超えて継続勤務する日)をいいます。つまり、法定の年休の付与日という意味です。

なお、年次有給休暇を基準日より前の日から与えることとしたときなど、法定で定める日よりも前倒しで付与している場合には厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないとされています。この点については、現在審議会で審議中です(案については以前取り上げた記事をご覧ください。)。

なお、労働者の時季指定または計画的付与制度により年次有給休暇を与えた場合は、当該与えた日数分については、使用者は時季を定めることにより与えることを要しないものとされています。

4.中小事業主に対する1か月について60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の適用

中小事業主に対する1か月について60時間を超える時間外労働に対する通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金の支払義務の適用猶予に係る規定を平成32年4月1日をもって廃止するものとされました。

5.産業医の活動環境の整備

今回の改正では、職場の健康を担う産業医についても、改正が行われました。

  • 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならないものとされました。
  • 事業者の産業医に対する労働時間に関する情報提供義務が課されました。すなわち、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならないものとされました。産業医の選任義務のない事業場においても、同様の努力義務が課せられています。
  • 産業医の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならないものとされました。
  • 事業者は、産業医等による労働者の健康管理等の適切な実施を図るため、産業医等が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならないものとされました。
  • 産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の内容その他の産業医の業務に関する事項で厚生労働省令で定めるものを、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、労働者に周知させなければならないものとされました。産業医の選任義務のない事業場においても、同様の努力義務が課せられています。

リンク

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律について(厚生労働省HP,PDF)

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