労働者派遣法違反事例の分析~労働者供給該当事例~

栃木労働局が、労働者派遣法および職業安定法に違反した、派遣元事業主に対して、労働者派遣事業停止命令および労働者派遣事業改善命令を行いました。そこで、今回は労働者派遣事業の労務管理のヒントのため、これを取り上げてみたいと思います。

厚生労働省の資料によれば、今回の違反事例の概要は次のとおりです。

J社は、少なくとも平成23年3月から平成26年5月までの一定期間において、同社の代表取締役 が代表取締役を務める別会社であるA社で雇用した労働者3名を、J社の労働者であると偽り、労働者派遣と称してB社に派遣(供給)しました。この派遣(供給)が職業安定法第44条で禁止される労働者供給事業に該当したことから、今回の処分を受けることになりました(下図参照)。

なお、業務停止期間は1か月間とされています。

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さて、この事例は「労働者供給事業」に該当するものとされたことが処分の主要な原因です。

労働者供給は、職業安定法4条6項で定義されています。すなわち「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、・・・労働者派遣法・・・第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないもの」です。労働者供給は、「人夫出し」と呼ばれたりしますが、戦前、「自己の支配下にある労働者を鉱山、土木建築、港湾荷役などの労働現場に供給し労務に従事させる人夫供給業(労務供給業)が行われて」いたところ、「労働の強制、中間搾取、使用者責任の不明確化などの弊害が伴いがちであるとして」、現在も一部の例外を除いて、禁止されています(菅野和夫「労働法・第10版」)。

その例外の一つが、労働者派遣法に基づく労働者派遣なのですが(上記職安法4条6項)、労働者派遣法では、自社と雇用関係にある労働者を他の事業場へ派遣することが前提となっています。

ここで今回の事例をみると、勘の良い方は何がまずかったのかわかるのではないでしょうか。それは、J社と雇用関係にない労働者を派遣してしまったことです。逆に、この労働者がJ社と雇用関係にあれば、全く問題がなかった事例だったわけです。

想像を豊かにすれば、J社では特定派遣事業の届出しか行っておらず、臨時的な業務の依頼へ応えるために、このような行為に及んだのかもしれません。特定派遣事業所の場合、常用雇用者を派遣することになっているため一時的に雇用関係を締結して派遣するということはできないわけですが、少なくとも形式的にはもう少しやりようはあったように思われます。ただ、特定派遣事業の場合には、届出にあたって講習の受講義務がないため、違法行為であることの認識そのものがなかったことも考えられます。

労働者供給には、以前取り上げた二重派遣の場合にも該当することがあります。罰則も1年以下の懲役または100万円以下の罰金という、労働法の中では厳しいものが定められていますので、十分注意する必要があります。

■関連リンク

※本記事は、将来の法令遵守のために違反事例を取り上げたものです。そのため、社名等が掲載されている本行政指導へのリンクは貼らないこととします。ご了承ください。

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