• 今回は「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備」の部分のうち、有期契約労働者に関する部分についてみる。
  • 現行法の規定では、ある待遇差が不合理と認められるか否かの解釈の幅が大きく、労使の当事者にとって予見可能性が高いとは言えないため、個々の待遇ごとに、待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化することが適当とされた。
  • パート労働法で定められている「均等待遇規定」については、有期契約労働者もその対象としていくことが適当とされた。

「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備」の部分についてみてみましょう。はじめに、短時間労働者・有期契約労働者に関する部分です。

まず、現行法の内容について確認します。

パートタイム労働法第8条、労働契約法第20条では、正規雇用労働者と短時間労働者・有期契約労働者との間の待遇差については、次の3つの考慮要素を考慮して不合理と認められるものであってはならないとされています。

  1. 職務内容(業務内容・責任の程度)
  2. 職務内容・配置の変更範囲(いわゆる「人材活用の仕組み」)
  3. その他の事情

しかし、現行法の規定では、ある待遇差が不合理と認められるか否かの解釈の幅が大きく、労使の当事者にとって予見可能性が高いとは言えません。そこで、個々の待遇ごとに、待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化することが適当とされています。

また、「その他の事情」の解釈による範囲が大きくなっていることから、考慮要素として、「その他の事情」の中から、新たに「職務の成果」「能力」「経験」を例示として明記することが適当とされました。

次に、パートタイム労働法第9条で定められている①職務内容と、②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の差別的取扱いを禁止するいわゆる「均等待遇規定」についてみてみましょう。

これについては、適用範囲の拡大、すなわち、有期契約労働者についても、「均等待遇規定」の対象としていくことが適当とされました。

なお、裁判等でも争われている定年後の継続雇用の有期契約労働者に関する差別的取扱いの解釈については、退職一時金及び企業年金、公的年金の支給、定年後の継続雇用における給与の減額に対応した公的給付がなされていることを勘案することを認めるか否かについては、引き続き検討を行い、追って解釈の明確化を図っていくことが適当とされました。

参考リンク

労働政策審議会建議-同一労働同一賃金に関する法整備について-

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