マタハラ?一面報道された均等法に関する最高裁判決

image132金曜日は、めずらしく、新聞各紙(全部かどうかは見てませんが)の一面に労働裁判の記事が掲載されました。その判決文もさっそく公開されていましたので、今回はその最高裁判決について取り上げましょう。

1.事件の概要

まず、そもそも何が問題になったのかについて、みてみましょう。

この事件は、医療介護事業等を行う消費生活協同組合(Y組合)に勤務しており、平成20年まで副主任の職位にあった理学療法士である職員Xが、同年2月に妊娠し、労働基準法に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を請求したところ、その異動に際して副主任を免ぜられ(降格)、その後の産休・育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことから、この降格を男女雇用機会均等法に違反する無効なものであるなどと主張して,管理職(副主任)手当の支払および損害賠償を求めたものです。

2.原審(高裁)判決

原審(高裁判決)では、Y組合の措置は、職員Xの同意を得た上で、Y組合の人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行われたものであり、職員Xの妊娠に伴う軽易な業務への転換請求のみをもって、その裁量権の範囲を逸脱して均等法の禁止する取扱いがされたものではないから無効なものであるということはできないとしました。

3.最高裁判決

最高裁判決では、2の原審判決を破棄し、審理不十分として高裁へ差し戻しました。

まず、今回問題となった均等法の規定について確認しておきましょう。

均等法では、女性労働者につき、妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならない旨を定めています。そして、均等法施行規則では、「妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業等」の「等」には労働基準法の規定による軽易業務への転換が含まれるとされているとして、女性労働者につき産前産後の軽易業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは、強行法規に違反し、違法・無効であるというべきとされました。

したがって、本判決では、争われている妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として均等法の禁止する取扱いに当たるものとされました。

そして、例外的に均等法が禁止する取扱いに該当しない場合として、労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、次のいずれかに当たることを挙げました。

  1. 労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき
  2. 降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき

このような枠組みにより、本件については、業務上の必要性から支障があったか否か等は明らかではないことや上告人の意向に反するものであったというべきであることなどを理由に挙げて、被上告人における業務上の必要性の内容や程度,上告人における業務上の負担の軽減の内容や程度を基礎付ける事情の有無などの点が明らかにされない限り、上記2のような事情を認めることはできないものというべきであるとされ、審理不十分として差し戻しました。

さて、長い判決文をなんとかより分けてあらすじを追ってみましたが、ポイントとしては、妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として均等法の禁止する不利益取扱いに当たる、つまり違法・無効であることが明らかにされたことです。

そして、不利益取扱いにあたらないとする場合が2つ挙げられました。一つが自由な意思に基づいて承諾したこと、もう一つが業務上の必要性や有利不利な影響などに照らして均等法の趣旨・目的に反しないと認められる特段の事情があること、ということになります。実務的には、当然前者によることになると思われますが、判決に則したものとするためには、少なくとも配置転換の目的や復帰後の見通しを十分説明した上で、合意書面をとるということになるでしょう。

ちなみに、私的な感想を書けば、「厳しい!」です。なぜなら、人事労務担当者の一般的な認識では、本裁判で争われた措置は、原判決のように「人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行われたもの」であると考えられていると想像されるからです。

しかし、妊娠・出産がきっかけとなった措置については、原則違法・無効となるというのであれば、話が変わってきます。今後、研究者や弁護士による評釈・実務対応の解説が出てくると思われますので、それらもふまえて、今後の対応の仕方を検討するべきでしょう。

ちなみに、本裁判はマタハラ裁判と報道されています。当事者の主観的な心情はわからないのですが、事件のあらすじだけ見ていると、軽易に転換するから役職を解かれ、育休から戻ってきたらすでに別の人がその役職についていたという話のように思えるので、ハラスメントの意図があってのことなのかどうかはこれだけではよくわかりませんね。

■参考リンク

平成26年10月23日 第一小法廷判決(裁判所HP,PDF)

 

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