厚生労働省は、平成25年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を取りまとめ、公表しました。
これは、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、平成14年から、労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを年1回取りまとめているものです。そこで、今回は、その主なポイントについてみてみましょう。
1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
- 請求件数は 784 件で、前年度比 58 件の減。2年連続で減少した。
- 支給決定件数は 306 件(前年度比 32 件の減)で、3年ぶりに減少した。
- 業種別(大分類)では、請求件数は、「運輸業,郵便業」 182 件、「建設業」 122 件、「卸売業,小売業」 110 件の順で多く、支給決定件数は「運輸業,郵便業」 107 件、「卸売業,小売業」 38 件、「製造業」 36 件の順に多い。
- 職種別 ( 大分類 ) では、請求件数は「輸送・機械運転従事者」 170 件、「専門的・技術的職業従事者」 101 件、「サービス職業従事者」 82 件の順で多く、支給決定件数は「輸送・機械運転従事者」 95 件、「販売従事者」 38 件、「専門的・技術的職業従事者」 37 件の順に多い。
- 年齢別では、請求件数は「 50 ~ 59 歳」 241 件、「 60 歳以上」 228 件、「 40 ~ 49 歳」 210 件の順で多く、支給決定件数は「 50 ~ 59 歳」 108 件、「 40 ~ 49 歳」 92 件、「60 歳以上」 50 件の順に多い。
2 精神障害に関する事案の労災補償状況
- 請求件数は、 1,409 件で、前年度比 152 件の増となり、過去最多。
- 支給決定件数は 436 件(前年度比 39 件の減)で、4年ぶりに減少した。
- 業種別( 大分類)では、請求件数は「製造業」 249 件、「医療,福祉」 219 件、「卸売業,小売業」 199 件の順に多く、支給決定件数では「製造業」 78 件、「卸売業,小売業」65 件、「医療,福祉」 54 件の順に多い。
- 職種別(大分類)では、請求件数は「事務従事者」 350 件、「専門的・技術的職業従事者」 307 件、「サービス職業従事者」 176 件の順に多く、支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」 104 件、「事務従事者」 86 件、「生産工程従事者」 56 件の順に多い。
- 年齢別では、請求件数は「 30 ~ 39 歳」 428 件、「 40 ~ 49 歳」 421 件、「 20 ~ 29 歳」 277 件の順に多く、支給決定件数は「 30 ~ 39 歳」 161 件、「 40 ~ 49 歳」 106 件、「 20 ~ 29 歳」 75 件の順に多い。
- 出来事別の支給決定件数は、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」と「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」がそれぞれ 55 件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」 49 件の順に多い。
ところで、今回の発表で添付されていた資料の中には、時間外労働と認定件数に関するものがありました。
それによれば、脳・心臓疾患については、時間外労働が60時間未満のケースでは認定件数が0なのに対して、精神障害については、20時間未満でも97件(全体の20%)認められていました。したがって、脳・心臓疾患の労災認定のケースでは時間外労働の時間数が重視される一方、精神障害については必ずしもそうでないことがわかります。
では、精神障害についてはどういった理由で認定されているのが多いかについて見ると、「上司とトラブルがあった」が231件(約19%)、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が127件(約10%)となっています。このように、精神障害については時間外労働に限らず、上司とのトラブルのような人間関係が理由の場合にも認定されることがあることに注意する必要があるでしょう。
■関連リンク 成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を公表(厚労省HP)
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