• 報酬の取扱いを明確化する通達が発出された
  • 7月2日以降新たにその支給が諸規定に定められた場合には、年間を通じ4回以上の支給につき客観的に定められているときであっても、次期標準報酬月額の定時決定による標準報酬月額が適用されるまでの間は、賞与に係る報酬に該当しないものとして扱う

世界の年金事務所からVOL12:港年金事務所

健康保険法および厚生年金保険法では、「賃金、給料、俸給、手当または賞与およびこれに準ずべきもの」のうち、「臨時に受けるもの」および「三か月を超える期間ごとに受けるもの」以外のものは、標準報酬月額に係る「報酬」とされています。この「報酬」を用いて、標準報酬月額が決定され、毎月の保険料が計算されます。

そして、毎年7月1日現在における賃金、給料、俸給、手当または賞与およびこれに準ずべきもので毎月支給されるものを「通常の報酬」、「通常の報酬」以外のものを「賞与」として区別します。

賞与については、通常支給の都度、支給額に応じた社会保険料が発生することになりますが、賞与の支給実態が、次のいずれかに該当する場合は、その賞与は「報酬」に該当することになり、標準報酬月額の算定に含めなければなりません。

  1. 賞与の支給が、給与規定、賃金協約等の諸規定によって年間を通じ4回以上の支給につき客観的に定められているとき
  2. 賞与の支給が7月1日前の1年間を通じ4回以上行われているとき

ところで、上記の「通常の報酬」、「賞与に係る報酬」および「賞与」については、二以上の異なる性質を有するものである場合があります。この点について、新たな解釈が通達されました(H30.7.30保保発0730第1号、年管管発0730第1号)。

本通達によれば、このような場合には、名称の如何に関わらず、諸規定または賃金台帳等から明らかであれば、同一の性質を有すると認められるもの毎に判別するものであるとされています。

たとえば、「業績に応じて支給される手当として、毎月定額により支給される手当(手当 A1)と、半年毎に支給される手当(手当 A2)が、給与規程上は「手当 A」として規定されているが、賃金台帳上では「手当 A1」及び「手当 A2」と区分して記載されている場合には、「手当 A1」と「手当A2」は客観的に区分できるものとして、「手当 A1」を「通常の報酬」、「手当 A2」を「賞与」として取り扱う。」とされています(H30.7.30 事務連絡)。

また、上記2に関連して、7月2日以降新たにその支給が諸規定に定められた場合には、年間を通じ4回以上の支給につき客観的に定められているときであっても、次期標準報酬月額の定時決定による標準報酬月額が適用されるまでの間は、賞与に係る報酬に該当しないものとして扱うとされました。つまり、新たに諸手当等の支給が諸規定に定められた場合、仮に年間を通じ4回以上の支給が客観的に定められている場合であっても、次期標準報酬月額の定時決定までの間は、賞与に係る報酬額を算定することが困難であることから、「賞与」として取り扱い、賞与支払届を提出しなければならないというわけです。

今回の通達は、業績給(インセンティブ)が支払われている会社が適用される対象になることが考えらえます。就業規則(賃金規程)等の規定内容を確認してみるとよいでしょう。

参考リンク

「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正について(厚生労働省HP,PDF)

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