GW特別記事:同一労働同一賃金に関する過去の裁判例

写真は記事内容と関係ありません。

今回はGW中ですので、通常のニュース記事ではなくて、近年議論されている「同一労働同一賃金」に関連して、これまで雇用形態の違いにより争われた裁判例について取り上げてみたいと思います。

都合よく、厚生労働省の審議会でまとまった資料がありましたので、事案については本資料の中から3件紹介します。

1.丸子警報器事件(平成8年長野地裁判決)

<事案概要>

原告(臨時社員)が、正社員と勤務時間も勤務日数も変わらず同じ仕事をしてきたにもかかわらず、不当な賃金差別により損害を受けたとし、同一(価値)労働同一賃金の原則という公序良俗に反するなどとして、被告会 社に対し、賃金差額相当額などの損害賠償を請求 した。

<原告の勤務実態>

  • 有期契約のパート労働者(契約は反復更新)
  • 2か月の契約を反復更新することにより継続して雇用。勤続年数は25年を超える者もいた。
  • 所定労働時間は正社員より短い(15分)が、 通常、15分間の残業しており、実労働時間は正 社員と同じ。業務内容、勤務日数も正社員と同 じ。
  • 賃金は、正社員の基本給は年功序列で ある一方、臨時社員の基本給は勤続年数 による昇給はほとんどなく、勤続25年の 社員では、正社員の賃金を100とすると 臨時社員の賃金は66.3となっていた。

<裁判所の判断>

【原告一部勝訴】 ※東京高裁で和解成立

①「同一(価値)労働同一賃金の原則が、労働関係を規律す る一般的な法規範として存在していると認めることはできない」とした上で、 ②賃金格差について、「同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念は、賃金格差の違法性判断において、ひとつの重要な判断要素として考慮されるべきものであって、その理念に反する賃金格差は、使用者に許され た裁量の範囲を逸脱したものとして、公序良俗違反の違法を招来する場合がある」とし、職務の内容等の実態から、 臨時社員と正社員の同一性を比較し、臨時職員の賃金が、 「原告らの賃金が、同じ勤務年数の女性正社員の8割以下 となるときは、許容される賃金格差の範囲を明らかに越え、 その限度において被告の裁量が公序良俗違反として違法と なると判断すべきである。」とした。


2.京都市女性協会事件(平成21年大阪高裁判決)

<事案概要>

原告(嘱託職員)が、一般職員と同一の労働をしてい るにもかかわらず、一般職 員の賃金よりも低い嘱託職員の賃金しか支給しなかっ たことが、同一(価値)労働同一賃金の原則等に違反 するとして、不法行為に基 づく損害賠償等を請求した。

<原告の勤務実態>

  • 1年の雇用期間を反復更新することにより、 3年間雇用されていた。
  • 実労働時間は業務内容(相談業務等)が同 じ一般社員に比べ短い(週35時間契約)
  • 一般職員である相談員はいなかった。
  • 当初予定されていた相談業務以外にも従事 しており、実質一般職員と同様の業務を行っ ていた。(原告主張)
  • 賃金・手当について差があった。 ※一般職員と計375万円余りの差(原告主張)

<裁判所の判断>

  • 同一(価値)労働同一賃金の原則については、一般的な法規範として認めるべき根拠はなく、これに基づくところの公序があると考えることもできない。
  • 一方、パート法改正や労契法の規定を踏まえると、同一 (価値)労働であるにもかかわらず、当該事業所における 慣行や就業の実態を考慮しても許容できないほど著しい賃金格差が生じている場合には、均衡の理念に基づく公序違反として不法行為が成立する余地があるという一般論を提 示しつつ、結論としては救済を否定した(労働の同一(価値)性を否定した)。

3.ニヤクコーポレーション事件(平成25年大分地裁)

<事案概要>

原告(準社員)が、 正社員と準社員の待 遇の差(賞与額・休 日等)はパートタイム労働法第8条1項 (当時。現在の同法 第9条)に違反する 差別的取扱いである として、不法行為に基づき、賞与の差額等の損害賠償を請求 した。

<原告の勤務実態>

  • 原告(準社員(正社員の所定労働時間は8時間に対し、準社員は7時 間))は、1年の雇用契約を反復更新することにより、約7年継続し て雇用。
  • 正社員と同じ業務に従事しており、人材活用の仕組みも正社員と同じ 。
  • 就業規則には正社員について転勤・出向を命ずることがある旨の 規定があり、準社員には転勤・出向を命ずることはないと定められていたが、実際には、正社員の転勤・出向も数が少なく、過去10年にお いては管内では転勤・出向はなかった。
  • 待遇においては、準社員は正社員と比べて賞与額が年間40 万円低く、休日が年間31日少ないなど差があった。

<裁判所の判断>

(同一労働同一賃金の原則を一般的な法規 範として認めるべきかについては言及がなく)原告は、パートタイム労働法第8条 (現第9条)1項の「通常の労働者と同視 すべき短時間労働者」に該当すると認めら れ、同項に違反するとし、損害賠償請求を 認めた。


以上のように、裁判所は、これまで同一労働同一賃金の一般的法規範性を否定しながらも、さまざまな事情を考慮しても許容できないような著しい賃金格差がある場合に公序良俗違反として違法と判断してきました。ただし、「丸子警報器事件」のように、実際に賃金格差が違法と認められたのは例外で、多くの裁判例が賃金格差を違法とまでは認定しませんでした。

しかし、パートタイム労働法等の改正が行われた後の平成25年のニヤクコーポレーション事件では、下級審レベルではあるものの、初めてパートタイム労働法8条(現9条)の適用を認めた判決として注目されました。さらに、現在では、労働契約法20条をめぐってハマキョウレックス事件や長澤運輸事件等が最高裁で争われています。

このように、近年、賃金格差の違法性を認める根拠となる規定が明文化され、それにともなって、正社員と非正社員の間の賃金格差が違法と判断されるケースが散見されるようになってきました。今後さらに「同一労働同一賃金ガイドライン」が制定され、予定されている法改正が進めば、ますます「非正社員だから」という理由は認められなくなるでしょう。

もっとも、多くの経営者は、能力が高ければ非正社員であっても正社員と同水準かそれより高い給料を払っても構わないと考えているのではないでしょうか。すると、今後は正社員と非正社員の能力を測る共通の「物差し」が各企業で必要になってくるでしょう。

参考リンク

第1回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会(厚労省HP)

MORI社会保険労務士・行政書士事務所(千葉県千葉市)では、日々生じる従業員に関する問題やちょっとした労働法に関する疑問、他社事例について、気軽に電話やメールで相談できる「労務相談」業務の依頼を受託しています。もちろん同一労働同一賃金に関するご相談、給与計算(年末調整)、労働・社会保険、就業規則、各種許認可業務等も対応します。

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MORI社労士・行政書士事務所

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