今回の記事、ざっくり言うと・・・

  • 短時間労働者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大が今年10月から開始されますが、それを前に、 日本年金機構がパンフレットとQ&Aを公開
  • 「被保険者の総数が常時500人を超える」とは、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12ヵ月のうち、6ヵ月以上500人を超えることが見込まれる場合

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世界の年金機構からVOL:008墨田年金事務所

短時間労働者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大が今年10月から開始されますが、それを前に、 日本年金機構がパンフレットとQ&Aを公開しました。

今回適用拡大される事業所とは、「特定適用事業所」と呼ばれ、同一事業主の適用事業所の厚生年金保険の被保険者数が、1年で6か月以上、500人を超えることが見込まれる事業所をいいますが、今回はこの「特定適用事業所」について、Q&Aをふまえてみていくことにしましょう。

なお、以下では法人の事業所に限って説明しています。

まず、使用する被保険者の総数が常時500人を超えるかどうかについて、その判定は企業ごとに行われます。

具体的には、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時500人を超えるか否かによって判定されます。

また、「被保険者の総数が常時500人を超える」とは、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12ヵ月のうち、6ヵ月以上500人を超えることが見込まれる場合というとされています。

では、「特定適用事業所」に該当した場合には、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

この点については、特定適用事業所に該当した場合、同一の法人番号を有する全ての適用事業所を代表する本店又は主たる事業所から、日本年金機構(以下「機構」という。)の事務センター(または年金事務所)へ特定適用事業所該当届を届け出るものとされています。

ただし、平成27年10月から平成28年8月までの各月のうち、6ヵ月以上500人を超えたことが確認できる場合は、機構において対象の適用事業所を特定適用事業所に該当したものとして扱い、対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当通知書」を送付するため、特定適用事業所該当届の届出は不要とされています。この場合でも、適用拡大にともなって生じる資格取得手続きは必要とされています。

施行日以降については、機構において、使用される厚生年金保険の被保険者の総数が直近11ヵ月のうち、5ヵ月500人を超えたことが確認できた場合(5ヵ月目の翌月も被保険者数が500人を超えると特定適用事業所に該当する場合)は、対象の適用事業所に対して、「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」が送付されます。

しかし、「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」が送付され、5ヵ月目の翌月も被保険者の総数が500人を超えたため特定適用事業所に該当したにもかかわらず、年金事務所へ特定適用事業所該当届を届け出なかった場合は、機構において対象の適用事業所を特定適用事業所に該当したものとして扱い、対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。

なお、機構において使用される被保険者の総数が直近12ヵ月のうち、6ヵ月以上500人を超えたことが確認できなかった場合でも、事業主が特定適用事業所に該当すると判断した場合は、事務センター(又は年金事務所)へ特定適用事業所該当届を届け出る必要があるとされています。

さて、Q&Aを拾い読みしてきましたが、なんともわかりづらい仕組みです。「特定適用事業所」に該当するかどうかは、原則として会社による届出が必要とされていますが、施行日・施行日後に「特定適用事業所」に該当すると機構が確認した場合は、機構から「該当通知書」が送付されるようです。

さらに、機構が特定適用事業所に該当すると確認できなかった場合でも、事業主が「特定適用事業所」に該当すると判断した場合は、届け出る必要があるとされています(この場合の適用年月日はどうなるのでしょうか?)。

このように、Q&Aを見ても実務的な取扱いには不透明な点が残されていますので、引き続き情報提供が行われることに期待しましょう。

関連リンク

平成28年10月より短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が始まります。(日本年金機構HP)

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