今回の記事、ざっくり言うと・・・

  • 中退共の資産運用のリスク管理体制を強化するとともに、制度のポータビリティの向上等を通じた事務・事業の見直しを行うための改正が行われた

image151勤労者退職金共済機構における資産運用のリスク管理体制を強化するとともに、制度のポータビリティの向上等を通じた事務・事業の見直しを行うため、中小企業退職金共済法が改正されました。その内容は、次のようなものです。

資産運用に係るリスク管理体制の強化(平成27年10月施行)

  • 資産運用業務に対するリスク管理機能等を強化するため、勤労者退職金共済機構に、厚生労働大臣が任命する委員から構成される資産運用委員会を設置し、資産運用の重要事項に係る審議等を行う。

制度のポータビリティの向上等を通じた事務・事業の見直し(平成28年4月施行)

  1. 特定退職金共済事業を廃止する団体から、事業主単位で中小企業退職金共済制度(中退共制度)へ資産移換するこ
    とを可能とする。
  2. 中退共制度に加入している事業主が中小企業者でなくなった場合、事業主単位で中退共制度から確定拠出年金制度(DC)(企業型)へ資産移換することを可能とする。
  3. 中退共制度と特定業種退職金共済制度間等の通算において、通算できる金額の上限を撤廃する。
  4. 中退共制度に加入している従業員が転職等により中退共制度間等を移動した場合の通算の申出期間を、現行の2年以内から3年以内へ延長する。
  5. 建設業退職金共済制度における退職金が支給されない掛金納付期間を、現行の24月未満から12月未満へ短縮する。
  6. 勤労者退職金共済機構が住基ネットを活用して退職金未請求者の住所把握を行うことを可能とする。

ところで、中小企業退職金共済(中退共)とは、中小企業のための国の退職金制度で、そのしくみは次のとおりです(中退共HP)。

  • 事業主が中退共と退職金共済契約を結びます。
  • 事業主は毎月の掛金を金融機関に納付します。
  • 従業員が退職したときは、その従業員に中退共から退職金が直接支払われます。

また、中退共に新しく加入する事業主について一定の助成が受けられるほか、税法上の特典があることなどの特徴もあります。

今回の法改正では、上記2に見られるような転職などによるデメリットの解消が図られました。もともと従業員の定着率を高めたくて制度を導入したような会社にとっては、必ずしも歓迎されるような内容とは限らないものですが、逆に求人の場面では良い影響も期待できるでしょう。

関連リンク

中小企業退職金共済法の改正について(厚生労働省HP)

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