今回の記事、ざっくり言うと・・・

  • 介護休業について分割して3回まで取得できることなどをふくむ制度改正の方向性が示された
  • 所定外労働免除は介護終了までの制度とされることが打ち出されており、10年以上長期にわたる制度利用も想定される

 

厚生労働省の労働政策審議会が仕事と家庭の両立支援対策の充実について建議を行いました。

今回の建議は、まず初めに「仕事と介護の両立支援制度の位置づけ」が掲げられていることからも推測されるように、介護休業制度などの改正が大きな部分を占めています。そこで、今回は、介護関係の内容について改正することが「適当」とされたものをみてみましょう。

1.介護休業制度

  • これまで対象家族1人につき、一の「要介護状態」ごとに1回とされていたものを、「分割して複数回取得できること」、具体的には、「3回取得できることとすること」
  • 休業できる期間については、「介護休業を分割取得できることとすることや、他の両立支援制度を充実させることも踏まえ、通算して93 日のままとすること」
  • 介護休業を取得できる対象家族について、「祖父母、兄弟姉妹及び孫について同居・扶養要件を外すこと」(所定労働時間の短縮措置等(いわゆる選択的措置義務)、介護休暇、所定外労働の制限、深夜業の制限も同様)

2.介護休暇

  • 取得単位について、「半日(所定労働時間の二分の一)単位の取得を可能とすること」(子の看護休暇についても同様)
  • 介護休暇を所定労働時間の二分の一を単位として取得することが困難と認められる労働者については、労使協定により除外できるとすること
  • 半日単位の設定について、労使協定により、所定労働時間の二分の一以外の「半日」とすることも可能とすること

3.その他

  • 介護のための所定労働時間短縮措置等について、「介護休業とあわせて93 日とされている現状から独立させること」、「利用を申し出たときから3年以上の期間措置すべきものとし、3年以上の間で少なくとも2回以上の申出が可能となる制度とすること」
  • 「介護に係る所定外労働の免除を法律上に位置づける」とされ、さらに「介護終了までの期間について請求することのできる権利として位置づけること」

image197以上をまとめると、左図のようになります(クリックすると拡大します。)。

あまり注目されていないようですが、実は企業として大きな課題となるのが「所定外労働の免除」ではないかと踏んでいます。

なぜなら、介護は10年以上の長期にわたるケースもあるため、本制度の利用も長期化することが考えられるためです。

今後厚労省内での議論、国会での議論を経て最終的に何らかの経過措置が設けられることも考えられますが、現時点では、その点については触れられていません。制度が浸透しない場合には紛争が増加することも考えられます。

その一方で、すでに仕事と介護の両立に不安を抱いている人は半数を超えている現状もあり、すでに大企業では、年100時間分の介護費を全額負担する制度や介護休業を無期限で認める制度、在宅勤務制度を導入するなどの支援制度を用意しているケースもあるようです。

関連リンク

労働政策審議会建議「仕事と家庭の両立支援対策の充実について」(厚生労働省HP)

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