• 働き方改革推進法による改正労基法について、政省令も含めた厚労省の解釈を示した施行通達が公開された
  • 今回の改正では、フレックスタイム制における清算期間の上限をこれまでの1箇月以内から3箇月以内に延長され、通達ではこれに関連した取扱いが示されている。
  • 清算期間が1箇月を超える場合には、当該清算期間を1箇月ごとに区分した各期間ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が 50 時間を超えた場合には時間外割増賃金の支払いが必要

世界の労働基準監督署からVOL017:三田労働基準監督署

働き方改革推進法による改正労基法について、厚労省の解釈を示した施行通達(H30.09.7基発0907第1号)が公開されました。今回は、その内容のうち、フレックスタイム制について見ていくことにしましょう。

今回の改正では、仕事と生活の調和を一層図りやすくするため、フレックスタイム制における清算期間の上限をこれまでの1箇月以内から3箇月以内に延長されました。

そのため、清算期間内の働き方によっては、各月における労働時間の長短の幅が大きくなることが生じ得ることになります。そこで、清算期間が1箇月を超える場合には、当該清算期間を1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間を生じたときには、当該期間)ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が 50 時間を超えないこととされました。

また、フレックスタイム制の場合にも、使用者には各日の労働時間の把握を行う責務がありますが、清算期間が1箇月を超える場合には、対象労働者が自らの各月の時間外労働時間数を把握しにくくなることが懸念されるため、対象労働者の各月の労働時間数の実績を対象労働者に通知等することが望ましいとされています。「望ましい」とあるようにこれは義務ではありませんが、時間管理がルーズになることを防止するために、労働時間の通知は随時行うのがよいでしょう。

では、今回の改正でフレックスタイム制の場合の割増賃金の支払いはどのようになるのでしょうか。

フレックスタイム制を採用した場合に法定時間外労働となるのは、清算期間が1か月以内かどうかで変わることになりました。

まず、清算期間が1箇月以内の場合については、従前のとおり、清算期間における実労働時間数のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間が法定時間外労働となります。

具体的な計算方法は、次のとおりです。

清算期間における実労働時間数 ― 週の法定労働時間×清算期間における暦日数/7

次に、清算期間が1箇月を超え3箇月以内の場合です。この場合、次のア及びイを合計した時間が法定時間外労働となります。

ア 清算期間を1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間を生じたときには、当該期間)における実労働時間のうち、各期間を平均し1週間当たり 50 時間を超えて労働させた時間。

  • 清算期間を1箇月ごとに区分した期間における実労働時間数-50×清算期間を1箇月ごとに区分した期間における暦日数/7

イ 清算期間における総労働時間のうち、当該清算期間の法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間(ただし、上記アで算定された時間外労働時間を除きます。)

なお、清算期間が1箇月を超える場合であっても、1週平均 50 時間を超える労働時間について月 60 時間を超える時間外労働に対して5割以上の率で計算した割増賃金の支払が必要です。

このほか、清算期間が1箇月を超える場合において、フレックスタイム制により労働させた期間が当該清算期間よりも短い場合には、労働させた期間を平均して1週間当たり 40 時間を超えて労働させた時間について、割増賃金を支払わなければならないものであること。この仕組みは、現行の1年単位の変形労働時間制に類似するものです。

参考リンク

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日基発0907第1号)(厚生労働省HP、PDF)

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