今日の記事、ざっくり言うと・・・

  • 「働き方改革実行計画(案)」が公表
  • 不合理な待遇差の是正を求める労働者が裁判で争える よう、その根拠となる法律を整備するとされています。そして、法改正の方向性が示された

第10回働き方改革実現改革で、「働き方改革実行計画(案)」が公表されました。これは、これまで議論されてきた同一労働同一賃金のガイドライン案や労働時間の罰則付き上限規制などをどのように進めていくのかというロードマップを示すものです。

そこで、今回はその中で「同一労働・同一賃金ガイドライン(案)」にともなって、今後どのような立法が行われることになっているのか、見ていくことにしましょう。

ところで、政府が示した「同一労働同一賃金のガイドライン案」は、正規か非正規かという雇用形態に関わらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一 賃金の実現に向けて策定したもので、その対象は、基本給、昇給、ボー ナス、各種手当といった賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生もカバーしたものとされています。

そこで、今後は、不合理な待遇差の是正を求める労働者が裁判で争える よう、その根拠となる法律を整備するとされています。そして、法改正の方向性は次のものが示されました。

① 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備

  • 有期雇用労働者について、均等待遇を求める法改 正を行う。
  • 派遣労働者について、均等待遇及び均衡待遇を求める法改正を行う。さらに、パートタイム労働者も含めて、均衡待遇の規定について、 明確化を図る

② 労働者に対する待遇に関する説明の義務化

  • 事業者は、有期雇用労働者についても、雇入れ時に、労働者に適用される待遇の内容等の本人に対する説明義務を課する
  • 雇入れ後に、事業者は、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者の求めに応じ、比較対象となる労働者との待遇差の理由等について の説明義務を課する

③ 行政による裁判外紛争解決手続の整備

  • 裁判外紛争解決手段(行政 ADR)を整備し、均等・均衡待遇を 求める当事者が身近に、無料で利用できるようにする

④ 派遣労働者に関する法整備

  • 派遣先事業者に対し、派遣先労働者の賃金等の待遇に関する情報を派遣元事 業者に提供する義務などの規定を整備する。
  • 派遣労働者として十分に保護が図られている場合として以下の3要件を満たす労使協定を締結した場合については、派遣先労働者との均等・均衡待遇を求めな いこととする。
    1. 同種業務の一般の労働者の賃金水準と同等以上であること
    2. 派遣労働者のキャリア形成を前提に能力を適切に評価して賃金 に反映させていくこと。
    3. 賃金以外の待遇について派遣元事業者に雇われている正規雇用 労働者の待遇と比較して不合理でないこと

なお、中小企業を含め、本制度改正は企業活動に与える影響が大きいものとなる ため、施行に当たっては、周知を徹底するとともに、十分な法施行までの準 備期間を確保するとされています。

さらに、同一労働同一賃金の法改正の施行に当たっては、説明会の開催や情報提 供・相談窓口の整備等を図り、中小企業等の実情も踏まえ労使双方に丁寧に 対応することを求めるとされています。また、不本意非正規労働者の正社員化や賃金引上げを支援するとともに、 賃金だけでなく諸手当を含めた待遇制度の正規・非正規共通化などに取り組 む企業への支援の仕組みを創設するとされています。

このようにしてみると、労契法では、パートタイム労働法にある「正社員と同視される労働者に対する差別的取り扱いの禁止」に類似する規定や正社員との待遇差に関する説明義務などが規定されると考えられます。

さらに派遣労働者に関しては、原則として均等・均衡待遇を求めつつ、労使協定を締結することによる例外規定が創設されると考えられます。

これらの改正が行われれば、実務的にも大きなインパクトがあると予想されますが、「十分な法施行までの準備期間を確保する」とされているなど、施行は少し先になるのではないかとみられます(下図参照)。

 

 

 

 

参考リンク

働き方改革実現会議(首相官邸HP)

MORI社会保険労務士・行政書士事務所(千葉県千葉市)では、日々生じる従業員に関する問題やちょっとした労働法に関する疑問、他社事例について、気軽に電話やメールで相談できる「労務相談」業務の依頼を受託しています。もちろん同一労働同一賃金に関するご相談、給与計算、労働・社会保険、就業規則、各種許認可業務等も対応します。

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