image100現在、厚生労働省では、正規・非正規の二極化を緩和し、労働者一人ひとりのワーク・ライフ・バランスと、企業による優秀な人材の確保や定着を同時に可能とするような、労使双方にとって望ましい多元的な働き方の実現が求められているとして、職務、勤務地、労働時間を限定した「多様な正社員」の普及・拡大のため雇用管理上の留意点を取りまとめる議論を進めています。

そのような中、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JIL)の調査により「多様な正社員」の可能性について、「新設(既にある場合は拡充)することを検討し得る」企業が19.1%であったことがわかりました。これは、JILが実施した「人材マネジメントのあり方に関する調査」および「職業キャリア形成に関する調査」によるものです。

同調査によれば、「多様な正社員区分を新設(拡充)することを検討し得る」理由としては、最も多かったのが「改正労働契約法による通算5年勤続後の無期転換に対応しなければならないから」で44.3%でした。それに続いて、「少子高齢化が進展するなか、必要な労働力をいかに確保するかに危機感を持っているから」が42.7%、「働き方や処遇等を限定した多様な正社員なら雇用の余地があるから」および「非正社員からの転換を促進し、優秀な人材を確保することができるから」がともに41.7%となっています。

「多様な正社員」は、安倍政権発足後、メディアなどでは「限定社員」として良くも悪くも注目を集めています。良い面としては、最初に書いたようにワークライフバランスや人材確保・定着のための施策として評価されています。他方、労働組合などからは、解雇有効のハードルが下がることを懸念する声が上がっています。

しかし、勘違いしないようにしておきたいのは、「多様な正社員」は、現在の法制度で導入可能であることです。実際、「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書によれば、多様な形態による正社員の雇用区分を導入している企業は約5割あるとされています。現在厚生労働省は、この制度をさらに普及させるための論点整理をおこなっているというわけです。

では、どのような企業が「多様な正社員」を検討した方がいいのでしょうか。私の考えでは、1つめは、有期契約労働者の多い職場です。これは、改正労契法による無期転換制度への対応ということです。2つめは、女性の多い職場です。これは、今後労働人口が一層減少することをふまえ、優秀な女性社員の雇用継続を図るためです。3つめは、高度な専門性が求められる業種です。これは、求める能力を明確化してそれに見合った処遇を行うためです。

実際、前述の調査でも、多様な正社員の新設・拡充を「検討し得る」と回答した企業のうち、これを業種別にみると、「宿泊業、飲食サービス業」や「金融業、保険業」「情報通信業」「生活関連サービス業、娯楽業」などで4社に1社を超えました。これらの業種は、いずれも多様な正社員の必要性が高いとして挙げた3つのいずれかに該当するでしょう。

「多様な正社員」は、企業によってその必要性に差がある制度だと思います。本調査の結果もふまえて、検討してみてはいかがでしょうか。

 

■参考リンク

「人材マネジメントのあり方に関する調査」および「職業キャリア形成に関する調査」結果(JILHP)

 

 

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