今日の記事、ざっくり言うと・・・

  • 厚生労働省が 大手自動車メーカー10社に対して行った 「いわゆる『期間従業員』の無期転換に関する調査」の結果を公表
  • 結論を先取りすれば、今回の調査の限りでは、現時点で直ちに法に照らして問題であると判断できる事例は確認されなかったとしている

厚生労働省が 大手自動車メーカー10社に対して 「いわゆる『期間従業員』の無期転換に関する調査」を行い、その結果を公表しました。これは、先日無期転換ルールの回避とみられるような運用が報道されたことを受けてのことと思われます。

労働契約法第18条では、同一の使用者との間で締結された有期労働契約が通算5年を超えた場合に、労働者の申込みによって無期労働契約に転換できる「無期転換ルール」が規定されており、厚生労働省は、これまで法の趣旨を踏まえた対応を求めてきたところ、今回その一環として、大手自動車メーカー10社の実情を把握する調査を行ったものです。

結論を先取りすれば、今回の調査の限りでは、現時点で直ちに法に照らして問題であると判断できる事例は確認されなかったとしてます。

今回の調査内容は、大手自動車メーカー10 社に対して、当該企業の本社所在地の都道府県労働局職員が本社を訪問し、直接聞き取りを実施たものです。

その内容は、①更新上限の有無、②再雇用について、一定期間の無契約期間の有無、③②がある場合でそれが必要な理由、④有期労働契約終了し一定期間経過後、再雇用の約束の有無、⑤正社員転換する仕組みの有無です。

①については、更新上限を設けている企業は、10 社中 10 社で、うち7社が2年 11 ヶ月(又は3年)としていました。

②については、再雇用まで一定期間が必要とされている企業は7社で、そのすべてが再応募が契約終了から6ヶ月未満の場合には再雇用しない運用としていました。そして、その理由(③)については、次のような内容でした。

  • 労働契約法の改正前から一定期間を必要とする運用を行っていたが、労働契約法の改正によりクーリング期間が6ヶ月とされたことを踏まえて、一定期間を法の規定と合わせる運用とした企業は、7社中5社
  • 労働契約法の改正を踏まえて、新たに一定期間が必要とする運用を行うこととした企業は、1社。
  • 無期転換ルールが創設される前から6ヶ月としていた企業が1社。

④については、無契約期間を運用上設けている7社のうち、有期労働契約が終了し、6ヶ月を経過した後、再雇用を約束している企業は、7社中0社でした。ちなみに、ここで、仮に再雇用の約束をしていた場合は、無期転換ルールを回避するためだけの無契約期間といえますので、法の潜脱とみなされかねないと考えられます。

最後に、⑤については、10 社中7社で制度化しており、残りの3社も制度化しているわけではないが、正社員登用を行っていると回答しました。

このように、大手自動車メーカーでは、直接的ではないにせよ、②の回答からわかるように、無期転換ルールを念頭にした運用を行っているとみることが出来るでしょう。

もっとも、このような手法は、非常に恵まれた労働条件を用意しているからこそ可能とみることもできます(「期間工 ○○○〔自動車メーカー〕で検索してみてください。)。3年ごとに従業員を入れ替える運用が可能であれば検討の余地もありますが、中小企業ではなかなか難しいのではないでしょうか。

参考リンク

「いわゆる『期間従業員』の無期転換に関する調査」の結果を公表します(厚労省HP)

MORI社会保険労務士・行政書士事務所(千葉県千葉市中央区)では、日々生じる従業員に関する問題やちょっとした労働法に関する疑問、他社事例について、気軽に電話やメールで相談できる「労務相談」業務の依頼を受託しています。もちろん無期転換ルールに関するご相談、給与計算(年末調整)、労働・社会保険、就業規則、各種許認可業務等も対応します。

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