• 働き方改革推進法にともなう労働基準法施行規則の改正案が諮問された
  • 使用者は、年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければならないものとされた

写真は記事の内容と関係ありません。

労働基準法施行規則の改正案の要綱が労働政策審議会に諮問されましたので、さっそくその内容を見ていくことにしましょう。今回は、これまで取り上げてなかった事項を中心に見ていきたいと思います。

1.労働条件の明示

労働基準法第15条1項の規定により労働者に明示する労働条件について、事実と異なるものとしてはならないと定められます。これは当然のことですが、省令で定められたことにより、労基署の指導監督の対象となることになります。

また、労働条件の明示の方法について、これまで「書面」に限定されていましたが、労働者が希望した場合には、①ファクシミリを利用してする送信の方法、②電子メール等による方法が認められることになりました(労働者が電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限ります。)。

2.労働者の過半数を代表する者

三六協定の締結などの当事者労働者となる「過半数を代表する者(過半数代表者)」について、使用者の意向に基づき選出された者でないものとすることが明記されます。また、使用者は、過半数代表者がその事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないとの規定が追加されます。

3.フレックスタイム制

働き方改革推進法により可能となる1か月を超えるフレックスタイム制(3か月が上限)の労使協定において定める事項に、協定の有効期間を追加するとされました。

4.三六協定

三十六協定で定める事項は新労基法36条2項で次のように定められています。

  • 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
  • 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限る。)
  • 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
  • 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数

さらに、省令で定める事項を次のとおりとされました。

  • 三六協定の有効期間
  • 1年の対象期間の起算日
  • 1月の休日労働を含む時間外労働時間が100時間未満であること、および2ないし6か月の期間における休日労働を含む時間外労働が80時間以下であること
  • 限度時間を超えて労働させることができる場合
  • 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置
  • 限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率
  • 限度時間を超えて労働させる場合における手続

なお、三六協定の新様式案もすでに公表されています。これについては、以前取り上げた記事をご覧ください。

また、健康及び福祉を確保するための措置の実施状況に関する記録を、三六協定の有効期間中及び有効期間の満了後3年間保存しなければならないものとされました。

5.年次有給休暇

年休の付与義務に関する省令事項のうち、年休の付与日を統一していたり、前倒しで付与している場合の取扱いについては、以前ふれたとおりです。

さて、新労基法では、使用者に対して10日以上付与される労働者に対して、5日は使用者が時季を指定して付与しなければならないとされましたが、有給休暇を与えるに当たっては、あらかじめ、法令の規定により有給休暇を与えることを労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならないものとされ、使用者は、労働者の意見を尊重するよう努めなければならないものとされました。ポイントは、新労基法の定めにより有休を与えることを明らかにすること、労働者の意見を聴くことまでが義務で、意見の尊重は努力義務とされているところでしょう。

また、使用者は、年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければならないものとされました。この年次有給休暇管理簿は、労働者名簿及び賃金台帳とあわせて調製することができるものとされました。

参考リンク

第146回労働政策審議会労働条件分科会(厚生労働省HP)

千葉県千葉市中央区のMORI社会保険労務士・行政書士事務所では、日々生じる従業員に関する問題やちょっとした労働法に関する疑問、他社事例について、気軽に電話やメールで相談できる「労務相談」業務の依頼を受託しています。もちろん働き方改革推進法に関するご相談、給与計算(年末調整)、就業規則、労働者派遣業等各種許認可業務等も対応します。まずはお気軽にお問い合わせください。

toiawase