今回の記事、ざっくり言うと・・・
- 改正労働者派遣法の施行日が9月1日とされていることについて、塩崎厚生労働大臣は記者会見の場で、施行日を延期することは考えていないと発言した
- 特定労働者派遣は、改正労働者派遣法により廃止されるが、新たに許可を取得するに当たって、小規模事業所のための配慮措置が設けられる予定
労働者派遣法の改正案が参議院で審議入りしました。そこで、今回は、先日の塩崎厚生労働大臣の記者会見の場で交わされた派遣法の改正案の質疑応答について取り上げ、現在注目されている改正法の施行日について、現在の動向を伺います。
本サイトでも何度か紹介している通り、改正労働者派遣法は9月1日の施行とされています。
しかし、7月21日の時点で参議院で議論が行われている現状を考えると9月1日の施行日には間に合わないのではないかといった声が、与党からも聞かれるようになっているのが現状です。
しかし、この点について質問された大臣は、労働契約申込みみなし制度が10月1日に施行になるということも踏まえて、「9月1日の施行期日につきましては、国会で速やかに御審議をいただくということをお願いしているところでありまして、政府、厚生労働省としましては、施行日を延期するということは考えていない」と回答しました。
このように、大臣としては、10月1日に施行される労働契約申込みみなし制度が念頭に、今のところ改正法の施行日を先送りしない意向のようです。
しかし、この場合、政省令の公布、施行通達の発出や業務取扱要領の改訂も施行日直前に行われることになることが予想されますので、改正法対応の準備期間は非常に限られることになります。というよりも、すでに始めてなければ間に合わないほどに差し迫っているといえるでしょう。
厚労省HPでは、通常国会に提出された内容の者ですが、改正法案に関する資料を掲載しています。
ところで、改正法案では特定労働者派遣業が廃止され、改正法施行日後に派遣事業を行うためには、必ず許可を取得することが定められています。
ただし、すでに届出を行った事業所については、施行日から3年間(平成30年8月31日まで)は、可を受けずとも、引き続き現在の特定労働者派遣事業を行うことができる経過措置が設けられますが、新規の事業の届出は、現在施行日とされている9月1日の前日である8月31日までで打ち切られることになると思われます。
なお、厚生労働省の資料によれば、常時雇用する派遣労働者の数が少ない派遣元事業主に対しては、新たな許可要件のうち、事業の財産的基礎となる資産要件等について、一定の軽減を行うことを検討するとされています。
※2015年8月2日追記
一部報道では、施行日を遅らせることについて与党内で調整が行われているとのことです。本記事は、掲載日時点での情報であることをご了解の上、最新の情報をご確認下さい。
※2015年10月1日追記
本ページに「経過措置」というキーワードでアクセスが多いようですので、特定労働者派遣事業の経過措置について、こちらに追記します。
施行日時点で届出により特定労働者派遣事業を営んでいる事業所については、平成 30 年9月 29 日まで、許可を得ることなく、引き続き「その事業の派遣 労働者が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業」(改正前の特定労働 者派遣事業に相当)を営むことが可能です。記事中では8月31日となっていますが、これは、記事掲載当時の施行日を想定したものですのでご注意ください。
なお、改正法では中小規模事業所について、次のような許可基準の緩和についても定められています。
- 常時雇用している派遣労働者が 10 人以下である中小企業事業主 →当分の間、基準資産額:1,000 万円、現預金額:800 万円
- 常時雇用している派遣労働者が5人以下である中小企業事業主 →平成 30 年9月 29 日までの間、基準資産額:500 万円、現預金額:400 万円
その他改正事項については、こちらもご覧ください。
■参考リンク
厚生労働大臣記者会見概要(平成27年7月21日、厚労省HP)
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