今回の記事、ざっくり言うと・・・
- 淀川労基署がK社について、社内預金等に関する労基法違反による送検事例を公表
- K社には、社内預金の管理の状況を労基署長に報告しなかったことなどの違反があった
平成 28 年3月25 日、淀川労働基準監督署がK株式会社と同社の代表取締役を労働基準法違反の疑いで、大阪地方検察庁に書類送検したことを公表しました。
今回は、その違反事由が「社内預金」に関する珍しいケースであったため、取り上げてみたいと思います。
本事件の概要は、大阪労働局の資料によれば次のとおりです。
すなわち、K社代表取締役は,労働基準法第 18 条第2項に基づき労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する者であったのである から,労働基準監督署長に届け出た貯蓄金管理協定に基づ いて、平成 26 年3月 31 日以前1年間における社内預金の管理の状況を、平成 26 年4 月 30 日までに淀川労働基準監督署長に報告しなければならなかったにもかかわらず、 その報告を行わなかったものです。
もとより、労働基準法は、いわゆる「強制貯金」を禁止する一方で、一定の制約のもとに労働者の貯蓄金をその委託を受けて社内貯金として管理することができます。「一定の制約」とは、大要次のとおりです。
- 労使協定の締結・届出をすること
- 貯蓄金の管理に関する規程を定め、労働者に周知するため、作業場に備え付ける等の措置を講じること
- 厚労省令で定められた下限利率(年0.5%)以上の利子を付けること
- 労働者が貯蓄金の返還を求めたときは、遅滞なく、これを返還すること
- 毎年3月31日現在の受入預金額の金額について、同日後1年間を通じて保全措置を講じること
- 毎年3月31日以前1年間における預金の管理の状況を所定の様式により4月30日までに労基署長に報告すること
労働新聞(平成28年4月18日付)は、本事件について、「必要な報告を行ったことは1度もなく、ずさんな資金管理が長期間常態化していたと同労基署はみている」と報じています。K社は、すでに破産手続きの決定を受けており、社内預金合計1,800万円が返還されないおそれもあるとのことです。
近年では、「社内預金」という制度がある会社をみる機会が減ったように思いますが、もし導入を検討するような場合には、少なくとも上記のような点に留意することが必要です。
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