今日の記事、ざっくり言うと・・・

  • 厚生労働省が「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」を公表
  • この資料は、「1.転勤に関する雇用管理について踏まえるべき法規範」、「2.転勤に関する雇用管理を考える際の基本的な視点」、「3.転勤に関する雇用管理のポイント」の3つのパートで構成
  • 勤務地の変更の有無や範囲により雇用区分を分ける場合、区分間の処遇の均衡や、労働者の事情や意向の変化への対応方法が主なポイントとなる
  • この場合、企業ごとに労使で十分に話し 合って納得性のある水準とすることが望ましい

厚生労働省が、事業主が従業員の転勤の在り方を見直す際に参考にしてもらうためにまとめた資料「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」を公表しました。

そこで、今回は、この中でも限定正社員に関連する「勤務地の変更の有無や範囲により雇用区分を分ける場合」の内容についてみていきましょう。

ここで、勤務地の変更の有無や範囲による雇用区分としては、①全国(海外を含む)転 勤がある雇用区分、②一定の地域ブロック内の転勤がある雇用区分、③転勤がない 雇用区分など、様々な形があり、自社の状況に応じて設定することが適当とされています。

さて、このような雇用区分を設ける場合、区分間の処遇の均衡や、労働者の事情や意向の変化への対応方法が主なポイントとなります。

たとえば、処遇の均衡(賃金、昇進・昇格)のうち賃金については、報告書では、勤務地の変更の有無や範囲により分けられた雇用区分の間の処遇の均衡を図ることが望ましいとしており、雇用区分間の賃金水準の差をどのように決めるのかが問題となります。

この点については、一 律に判断することが難しいですが、いずれにしても、企業ごとに労使で十分に話し 合って納得性のある水準とすることが望ましいとされており(当たり前ですが)、雇用区分間の賃金水準の差への納得性を高めるために、例えば、同一の賃金 テーブルを適用しつつ、転勤の有無等による係数を乗じたり、転勤手当等の転 勤の負担の可能性に対する支給をすることが考えられるとされています。

なお、平成 28 年に実施された JILPT アンケート調査では、勤務地限定正社員と全国転勤型との 間の年収(給与・賞与含む)の差については、「5~10%」とする企業が 27.4%、「10~15%」が 25.3%などとなっています。

逆に、転勤のある雇用区分における賃金の上乗せは、実際の転勤の有無にかかわらず当該雇用区分の選択時から適用され、事前のプレミアムとしての性格を持つものと、本拠地を離れる等の転勤をした時点から適用され、事後のプレミアム としての性格を持つものとが考えられますが、実際に転勤を経験する労働者の割合や本拠地の有無など、実情に応じて設計することが有効とされています。

次に、昇進についても見てみましょう。

転勤と昇進・昇格との関係には、次のようなケースが考えられます。

  1. 転勤と同時に昇進・昇格する場合(昇進ポ ストに就くための転勤)
  2. 転勤経験があることを要件として昇進・昇格の判断 がなされる場合
  3. 転勤に応じられることを要件とする昇進・昇格における選 抜
  4. 転勤を通じた業務経験が能力を向上させ結果的に将来の昇進・昇格につ ながる場合

このうち、2、3については転勤と人材育成上の効果の関係等を検証すること、4については、業務経験と能力の向上との関係等を検証しておくことが有効と考えられます。勤務地の変更の有無や範囲により分けられた雇用区分の間で、職務の範囲や 経験により習得する能力に相違があることが明らかでない場合には、昇進・昇 格の上限や滞留年数要件に予め差を設けることなく、転勤の有無とは関わりの ない要素に基づいて昇進・昇格を認めることが望ましいとされています。他方、習得する能力に相違があることが明らかな場合には、その相違の内容に応じて昇進・昇格に ついて上限や滞留年数要件に予め差を設けることも考えられるとされています。

関連リンク

「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」を公表します~事業主が従業員の転勤の在り方を見直す際に役立ててほしい資料を作成~(厚労省HP)

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