今日の記事をざっくり言うと・・・

  • 厚生労働省が平成28年度の「過労死等労災補償状況」を公表
  • 脳・心臓疾患の請求・支給決定が多いのは、請求件数、支給決定件数ともに「運輸業,郵便業」が最多
  • 精神障害のでは、請求件数は 「医療,福祉」が最多、支給決定件数では「製造業」が最多

写真は記事内容と関係ありません。

厚生労働省が平成28年度の「過労死等労災補償状況」を公表しました。

ここで、「過労死等」とは、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。」と定義されているものです。

まず、 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況についてみると、請求件数は825件(前年度比30件増)、支給決定件数は260 件(前年度比9件増)となり、 うち死亡件数も前年度比11件増の107件でした。

では、どのような「属性」で脳・心臓疾患の請求・支給決定が多いのでしょうか。まず、業種別では、請求件数、支給決定件数ともに「運輸業,郵便業」が最も多くなっており、職種別では、請求件数、支給決定件数ともに「輸送・機械運転従事者」が最多です。また、年齢別では、請求件数、支給決定件数ともに「50~59歳」が最多でした。

次に、時間外労働時間との関係についてみてみると、時間外労働時間別(1か月又は2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、「80時間以上~100時間未満」最多でした。 

このように、脳・心臓疾患については、トラックドライバーへの対策が急務といえるでしょう。このような高い数字は、職業的に高齢化が進んでいることと無関係ではないと思われますが、それゆえに年齢に応じた配慮が求められます。

次に、 精神障害に関する事案の労災補償状況についてみてみましょう。

精神障害については、請求件数は1,586件(前年度比71件増)、支給決定件数は498 件(前年度比26件増)でした。

業種別では、請求件数は 「医療,福祉」が最多で302件、支給決定件数では「製造業」が91件で最多でした。また、年齢別では、請求件数・支給決定件数ともに「40~49歳」が最多となっています。時間外労働時間別(1か月平均)支給決定件数は、「20時間未満」が84件で最多でした。

このように、脳・心臓疾患と精神障害では、異なる様相を呈しているといえます。特に精神障害の時間外労働時間別の結果で20時間未満が最多というのは特徴的です(なお、2番目に多いのは160時間なので、時間外労働時間と関係ないとは言えないでしょう。)。

そこで、精神障害の出来事別の支給決定件数についてみると、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が最多でした。このように、パワーハラスメント、いじめが精神障害の原因とみられるケースが多いといえます。

最後に、今回特別に調査された「裁量労働制対象者に係る支給決定件数」についても確認しておきましょう。

過去6年間で裁量労働制対象者に係る脳・心臓疾患の支給決定件数は22件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が21件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が1件でした。そして、裁量労働制対象者に係る精神障害の支給決定件数は39件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が37件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が2件でした。

参考リンク

平成28年度「過労死等の労災補償状況」を公表(厚労省HP)

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