今回の記事、ざっくり言うと・・・

  • 厚生労働省内に設置された研究会が、会社分割、事業譲渡等の組織の変動に伴う労働関係の諸課題について今後の方向性を示す報告書を公表した

 

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世界のハローワークからVOL:008 ハローワーク飯田橋

厚生労働省の「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」が、報告書を取りまとめ、公表しました。

本報告書は、会社分割、事業譲渡等の組織の変動に伴う労働関係の諸課題について検討を行った上で、今後の方向性について議論・検討を行うことを目的として議論を重ねられたもので、厚生労働省は、本報告書に取りまとめられた方向性を踏まえ、今後、具体的な対応策について検討するとしています。

今回は本報告書で示された「会社分割」に関する事項について、みていきましょう。

まず、会社分割については、次のような課題が挙げられていました。

  1. 事業に当たらない権利義務の分割の場合、「主従事労働者」か否かは、「権利義務」単位で判断(=権利義務のみの従事でも承継)するのか。
  2. 不従事労働者で承継される者は、5条協議の対象外のままでよいのか
  3. 不採算事業と共に承継又は残留する労働者への対応はどうするのか。
  4. 承継法によらない転籍合意と承継法に基づく手続等との関係をどう考えるのか。

1.については、「会社法の制定により、少なくとも理論上、従来の「事業」には該当しない(有機的一体性のない)権利義務であっても会社分割の対象にすることが可能となった」ことが背景としてあります。報告書では、この課題への対応として、「承継法における「主従事労働者」の判断基準としては、引き続き「事業」によることが妥当である」とされました。

2.については、いわゆる5条協議に関するものです。

「5条協議」とは、承継する事業に従事する労働者との個別協議の義務規定を定めた平成12年商法等改正法附則第5条を根拠とする手続きです。その対象は、承継される事業に従事している労働者となっているため、不従事労働者は5条協議の対象となっていないところ、「承継される不従事労働者についても5条協議の対象とすることが適当」とされました。

3.については、「「債務の履行に関する事項」も7条措置の対象であることをより明確に周知する等、同条の措置をより徹底することが適当」とされました。ここで、「7条措置」とは、「会社分割に当たり、分割会社が雇用する労働者の理解と協力を得るよう過半数労働組合等と協議を行う努力義務」をいいます。

また、「「債務の履行の見込みに関する事項」も承継に当たり情報提供すべき重要な事項として、この5条協議で説明する事項に含めることが適当」とされました。

4.については、「転籍合意とそれにより労働条件を変更することを一律に無効とするのではなく、分割契約等に定めのない主従事労働者が異議申出権を行使した場合には、承継法第4条第4項の効果により、労働条件を維持したまま労働契約承継の効力が生ずることになる」と整理した上で、次の事項を周知するとされました。

  • 会社は転籍合意をするとしても、5条協議や通知といった承継法上の手続は省略できないこと。
  • 会社は、転籍合意をしようとする場合には、労働者に対し、会社分割による労働契約の承継であれば、労働条件を維持したまま承継されることや主従事労働者であればそのための異議申出権を行使できることを含め説明すべきこと。また、労働者に対する通知事項にも、会社分割により承継される場合には労働条件を維持したまま承継されることを含めること。

関連リンク

組織の変動に伴う労働関係に関する研究会 報告書(厚生労働省HP)

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