今回の記事、ざっくり言うと・・・
- 平成28年10月から始まる健康保険・厚生年金保険の適用拡大について、現時点での情報をまとめた
- 省令で定められる未確定事項も残されていることに注意
今日(1月5日)もテレビで取り上げられていたので、平成28年10月から始まる健康保険・厚生年金保険の適用拡大について、現時点での情報をまとめておきたいと思います。
そこで、まずは、その元になる条文を見てみましょう(見なくてもいいのですが・・・)。
事業所に使用される者であって、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される・・・通常の労働者・・・の一週間の所定労働時間の4分の3未満である・・・短時間労働者・・・又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの
イ 1週間の所定労働時間が20時間未満であること。
ロ 当該事業所に継続して一年以上使用されることが見込まれないこと。
ハ 報酬(最低賃金法・・・第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、 第二十二条第一項の規定の例により算定した額が、八万八千円未満であること。
ニ 学校教育法・・・第50条に規定する高等学校の生徒、同法第83条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること
この条文と、年金機能強化法附則第17条の定めにより、短時間労働者への適用拡大の要件を次のようにまとめることができます(すべてを満たした場合に、社会保険が適用される)。
- 週20時間以上
- 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
- 勤務期間1年以上見込み
- 学生は適用除外
- 従業員 501人以上の企業 (適用拡大前の基準で適用対象となる労働者の数で算定)
ところで、上で引用した条文には、現時点では未確定のものもあります。たとえば、ハの報酬について、「最低賃金法・・・第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。」とされている点です。
最低賃金法4条3項では、おおざっぱに言うと①ボーナスや結婚祝金等、②時間外労働手当等、③精皆勤手当、通勤手当及び家族手当が、最低賃金に算入しないものとされています。省令がでるまで確定したものとして言うことはできませんが、「年収106万」といっても、一般的にイメージする年収とは異なるものである点には注意が必要です。
このほか、審議会で検討されている事項(つまり未確定事項)として次のようなものがあります。
- 1週間の所定労働時間とは、就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととさ れている時間をいうこと
- 勤務期間について、原則、雇用保険における取扱いと同様とすることとして、今後詳細を通知・マニュアル等で規定予定
- 学生の適用除外について、原則、雇用保険における取扱いと同様とすることとして、今後、省令及び通知等で規定予定。
- 規模501人以上の企業(特定適用事業所)について、今後詳細を通知・マニュアル等で規定予定。
このように、細かい運用規定については、未確定の部分も少なくありません。これらについては、明らかになり次第、当サイトでも取り上げることにします。
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