今日の記事、ざっくり言うと・・・

  • 厚生労働省内の審議会で「短時間労働者・有期契約労働者」に関するものから詳細な論点が示された
  • 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係、労働者に対する待遇に関する説明の義務化等について議論がされた

世界の労働基準監督署からVOL013:横須賀労働基準監督署

いよいよ同一労働同一賃金のための法改正に向けて議論がスタートしました。第一回目の会議では、「短時間労働者・有期契約労働者」に関するものから詳細な論点が示されました。今回は、その内容についてみていくことにしましょう。

1.労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係

  • 「均等」待遇規定(①職務内容と、②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の差 別的取扱いを禁止)について、有期契約労働者についても対象とするかどうか
  • 「均衡」待遇規定(①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情を考慮 して不合理な待遇差を禁止)について明確化を図るため、待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化するかどうか
  • 現行のパートタイム労働法においても、「職務の成果」「能力」「経験」と いった要素については、賃金決定に際し勘案を求めている要素でもあることから、「その他の事情」の範囲が狭く解されることのないよう留意しつつ、「その他の事情」の中から新たに例示として明記するかどうか
  • 比較対象となる者について、現行は、パートタイム労働法では同一の事業所に雇用される「通常の労働者」とし、労働契約法では同一の使用者に雇用される無期契約労働者としているが、近年は非正規雇用労働者自身が店長などの事業所の長であり、同一の事業所内に正規雇用労働者がいないケースも見られるため、同一の使用者に雇用される正規雇用労働者を比較対象とするかどうか
  •  こうした短時間労働者・有期契約労働者の均等待遇規定・均衡待遇規定等について、 解釈の明確化を図るため、ガイドライン(指針)の策定根拠となる規定を設けるかどうか

2.労働者に対する待遇に関する説明の義務化

  • 現行のパートタイム労働法においては、短時間労働者については、事業主に対し、以下の1)~3)の説明義務を課しているが、有期契約労働者についても同様としてはどうか。
    1. 特定事項(昇給・賞与・退職手当の有無)に関する文書交付等による明示義務、その他の労働条件に関す る文書交付等による明示の努力義務(雇入れ時)
    2. 待遇の内容等に関する説明義務(雇入れ時)
    3. 待遇決定等に際しての考慮事項に関する説明義務
  • これらに加え、短時間労働者・有期契約労働者が求めた場合には正規雇用労 働者との待遇差の内容やその理由等についての説明義務を課すかどうか
  • 説明を求めたことを理由とする不利益取扱いを禁止するかどうか

3.行政による裁判外紛争解決手続等

  • 現行のパートタイム労働法においては、短時間労働者については、行政が必要と認めた場合の事業主に対する報告徴収・助言・指導・勧告の規定が設けられた上で、法による義務範囲が明確な規定に関しては、公表の規定が設けられている。また、行政 ADR(裁判外紛争解決手続)として、労働局長による紛争解決援助や、調停の規定が設けられて いるが、有期契約労働者についても、短時間労働者と併せてパートタイム労働法に諸規定を移行・新設することにより、行政による履行確保措置の対象とするとともに、行政 ADR が利用できるようにするかどうか。
  • なお、現状では、均等待遇規定については報告徴収・助言・指導・勧告の対象としているが、均衡待遇規定については、報告徴収・助言・指導・勧告の対象としていない。しかし、 均衡待遇規定を含めガイドライン(指針)の策定により解釈を明確化できるものが出てくることから、均衡待遇規定に関しても解釈が明確でないグレーゾーンの場合は報告徴収・助言・指導・勧告の対象としない一方、解釈が明確な場合は、報告徴収・助言・指導・勧告の対象とするかどうか。その際は、均衡待遇規定については、従来どおり、公表の対象とはしないこととするかどうか。また、行政 ADR については、均等・均衡待遇を求める労働者の救済を幅広く対象として はどうか

4.その他

現行のパートタイム労働法では、短時間労働者には、国による施策の基本方針の策定、 就業規則の作成・変更時の意見聴取(努力義務)、通常の労働者への転換、労働者か らの相談体制の整備、雇用管理者の選任等の規定が設けられているが、有期契約労働 者についても同様に、これらの規定の対象としてはどうか

このように、パートタイム労働法でのみ規定されている規制を有期契約労働者へ拡大すること、また解釈の明確化することなどが法改正の方針として示されました。今後、さらに議論を深めて改正案が示されるものと思われますので、引き続き動向については当サイトでも注視していく予定です。

参考リンク

第1回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会(厚生労働省HP)

MORI社会保険労務士・行政書士事務所(千葉県千葉市)では、日々生じる従業員に関する問題やちょっとした労働法に関する疑問、他社事例について、気軽に電話やメールで相談できる「労務相談」業務の依頼を受託しています。もちろん同一労働同一賃金に関するご相談、給与計算(年末調整)、労働・社会保険、就業規則、各種許認可業務等も対応します。

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