image135厚生労働省は、「高年齢者雇用確保措置」の実施状況などをまとめ、その結果を公表しました。

なお、高年齢者雇用安定法では、65 歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるよう義務付けられています。

今回の集計結果は、従業員 31 人以上の企業約 14 万社の状況をまとめたもので、従業員 31 人~300 人規模を「中小企業」、301 人以上規模を「大企業」としています。

以下では、その結果のポイントについてみていきましょう。

1.高年齢者雇用確保措置の実施状況

高年齢者雇用確保措置を「実施済み」の企業の割合は98.1%(対前年差5.8ポイント増加)でした。企業規模別では、以下のとおりです。

  • 中小企業:98.0%(同6.1ポイント増加)
  • 大 企 業:99.5%(同3.9ポイント増加)

2. 希望者全員が65歳以上まで働ける企業の状況

希望者全員が65歳以上まで働ける企業は、71.0%(同4.5ポイント増加)でした。企業規模別では、以下のとおりです。

  • 中小企業:73.2%(同4.7ポイント増加)
  • 大企業:51.9%(同3.0ポイント増加)

また、70歳以上まで働ける企業は、19.0%(同0.8ポイント増加)でした。企業規模別では、以下のとおりです。

  • 中小企業:19.8%(同0.8ポイント増加)
  • 大企業:11.8%(同0.8ポイント増加)

このように、65歳以上まで働ける企業や70歳以上まで働ける企業の規模別の割合から、中小企業の取り組みの方が進んでいることが明らかとなりました。これは、人手不足が進む中で中小企業としては人材の確保のため、定年後も引き続き雇入れているものと考えられます。一方、規模の大きい企業になればなるほど、選別の難しさなどから原則として65歳以降の雇用については消極的となっているのではないでしょうか。

3. 定年到達者に占める継続雇用者の割合

過去1年間の60歳定年企業における定年到達者のうち、継続雇用された人は81.4%、継続雇用を希望しない定年退職者は18.3%、継続雇用を希望
したが継続雇用されなかった人は0.3%となりました。

ちなみに、この部分は、昨年改正された高年齢者雇用安定法施行後の影響にも興味がわきますので、昨年のデータも見ておきましょう(昨年のデータも2か月は改正法施行後のものですが。)。

平成25年の調査結果では、継続雇用された人は76.5%、継続雇用を希望しない定年退職者は22.3%、継続雇用を希望したが継続雇用されなかった人は1.2%でした。このように、継続雇用された人が5%増加、継続雇用を希望しない定年退職者も4%減少しました。

昨年4月から厚生年金の老齢厚生年金の支給開始年齢が61歳に引き上げられ、60歳の定年退職後に無収入の期間が生じること、労使協定による基準が適用できなくなることなどから継続雇用される人は増加し、継続雇用を希望しない人の割合が減少したのは、一般的な予想通りの結果となったといえます。

ところで、最近このようなニュースがありました→賃金格差:「仕事同じで定年境に減額は違法」契約社員提訴。これまでは一律に賃金を4割カットして再雇用するようなケースがよく見られましたが、今後このように継続雇用期の処遇に関する紛争が起こることも十分考えられます。したがって、賃金カットするにせよ、それについて合理的な説明が可能かどうかといった点についても、よく検討する必要があるでしょう。

■関連リンク

平成26年「高年齢者の雇用状況」集計結果(厚生労働省HP)

 

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