今日の記事、ざっくり言うと・・・

  • 厚生労働省が平成28年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を公表
  • 監督指導による賃金不払残業の是正企業数は、1,349企業、支払われた割増賃金合計額は127億2,327万円だった

厚生労働省が平成28年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を公表しました。これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、平成28年4月から平成29年3月までの期間に不払いだった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。

監督指導の対象となった企業では、定期的にタイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか確認するなど、賃金不払残業の解消のためにさまざまな取組が行われています。

平成28年度の監督指導による賃金不払残業の是正企業数は、1,349企業 (前年度比 1企業の増)うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、184企業でした。これにより、支払われた割増賃金合計額は127億2,327万円(同27億2,904万円の増)でした。

対象労働者数 は9万7,978人(同5,266人の増)に上り、支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり943万円、労働者1人当たりでは13万円でした。

ところで、今回の調査では、賃金不払残業の解消のための取組事例が公表されています。今回は、その一つを見ておきましょう。

この会社の賃金不払残業の状況は、インターネット上の求人情報等の監視情報を受けて、労基署が立入調査を実施したものです。ここでは、労働者が「申告書」に記入した超過勤務時間数により賃金計算を行っていましたが、パソコンのログ記録とのかい離、夜間の従業員駐車場の駐車状況、労働者のヒアリング調査結果などから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導されたものです。

そのため、会社では、代表者が「賃金不払残業撲滅宣言」を行うとともに、全店で説明会を開催し、「申告書」とパソコンのログ記録に30分以上のかい離が認められた場合には、理由を明記させ、所属長の承認を得ることとしました。さらに、総務部職員が定期的に、労働時間が適正に把握されているかについて実態調査を行い、必要な指導を行うこととしました。

この事例の特徴は、立ち入り調査の端緒がインターネット上の求人情報だったことです。近年、ハローワークでは求人票の労働条件に法令違反がないかどうかチェックされるようになりましたが、民間の求人情報誌では、まだそこまではチェックが及んでいないことが見受けられます。しかし、そのような場合でも、労基署(の委託機関)がチェックを行っていることがあるので、民間だから問題ないだろうということにはなりません。

また、自己申告制としている場合、タイムカードやパソコンのログ記録など他の客観的な記録とのかい離がある場合の管理が必要になります。この会社では、その改善策として、申告書とパソコンのログ記録に30分以上かい離がある場合には、その理由も申告させることとしました。このように、裏付け資料を日常的に作成しておくことで、説明できるようにしておくことは重要です。

参考リンク

「平成28年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果を公表します」(厚労省HP)

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