今回はキャリアアップ助成金のQ&Aのうち、令和7年度の制度改正により追加・更新されたものを中心にみていくことにしましょう。

Q-5 新規学卒者が支給対象外となるとのことですが、具体的にはどういう人が支給対象外となるのでしょうか。また、どういう人であれば支給対象となるのでしょうか。
A-5 新規学卒者で、申請事業主に雇い入れられた日から起算して1年未満の者は、支給対象外となります。例えば、令和7年4月1日に雇用された新規学卒者については、令和8年3月31日まで支給対象外です(なお、3月15日に卒業式を迎えたが就職先が決まっておらず4月2日以降に就職先が決まり、5月1日に就職したという者については、支給対象となり得ます。)。
一方、新規学卒者であっても、申請事業主に雇い入れられた日から起算 して1年以上経過していれば、支給対象となります。 この取扱いは、新規学卒者を、本来正規雇用労働者として雇い入れること ができるにもかかわらず、有期雇用労働者として雇い入れ、6か月経過後に正社員転換を実施し、助成金を支給申請するといった、本助成金の趣旨と離れた活用例があるとの指摘があることを踏まえたものです。

本Q&Aはキャリアアップ助成金の正社員化コースにおいて、雇入れ後1年未満の新規学卒者が対象外となったことについて、詳しく解説をしたものです。なお、新規学卒者についてはA-4で「新規学卒者とは、学校、専修学校、職業能力開発促進法第十五条の七 第一項各号に掲げる施設又は職業能力開発総合大学校を新たに卒業しようとす る者及び卒業年度の3月31日までに内定を得た者をいいます」とされていますので、かっこ内の部分のような考え方になります。

さて、今回の改正で最も大きなポイントが「重点支援対象者」に該当するかどうかで助成金の受給額が大きくことなるようになったことです。そこで、次のQ&Aでその範囲を確認しましょう。

Q-7 重点支援対象者について、具体的にどういった人が該当するのでしょうか。 A-7 重点支援対象者については、以下のいずれかに該当する方が該当します。
① 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
② 雇入れから3年未満で以下のいずれにも該当する有期雇用労働者
 ・申請事業主に雇い入れられた日の前日から起算して過去5年間に正規
  雇用労働者であった期間が合計1年以下
 ・申請事業主に雇い入れられた日の前日から起算して過去1年間に正規
  雇用労働者として雇用されていない
③ 派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者 なお、③に記載の人材開発支援助成金の特定の訓練修了者とは具体的には、
 (1)人材育成支援コース
 (2)事業展開等リスキリング支援コース
 (3)人への投資促進コース が該当します

このように「重点支援対象者」の範囲は広いとはいえず、対象になる方はあまり多く出ないように思われます。なお、②の確認は、「所定の様式 (様式第3号 1-5対象者確認票)により行いますので、同様式を、対象労働者に記入いただいた上で、申請書類に添付」することとされています(A-8)。

①-1正社員化コース(正社員定義・対象労働者要件・試用期間)について
Q-1 「『賞与または退職金の制度』かつ『昇給』のある正社員への転換が必要」とはどういった要件でしょうか。
A-1(中略)
(賞与)
支給要領に定める賞与の要件に該当する制度である場合、賞与以外の名目であったとしても支給対象となり得る場合があります。 例えば、本人の業績や貢献度等によって、事務職には賞与を6か月に1回支給、営業職には歩合手当を3か月に1回支給しており、他の賃金待遇も変わりない場合、この歩合手当の計算方法が賞与制度と比較して同等の制度であると客観的に判断できる場合には、営業職についても賞与制度を備えているものと見做し、支給対象となり得ます。
(退職金)【継続。「iDeCo+」(イデコプラス)は引き続き対象外。】
原則としては、事業主が積立・拠出額を負担することを規定した制度であって、実際に積立・掛金の拠出が行われている制度をいいますが、企業型確定拠出年金(選択型)をいわゆる生涯設計手当等の名目で予め受け取る場合や、その他原則の退職金制度と照らして不合理な制度でないと客観的に判断できる場合には支給対象となり得ます。
(昇給)
原則としては、基本給の昇給かつ、年1回以上の実施が予定される昇給制度をいいますが、全ての正規雇用労働者に支給され、かつ残業代や賞与、退職金の算定基礎となる諸手当を昇給する制度については、原則の昇給制度と照らして不合理な制度でないと客観的に判断できる場合には支給対象となり得ます。
※賞与、退職金、昇給については、企業規模や職種、地域の賃金水準等を勘案した、通常の正規雇用労働者の労働条件として妥当な額とする必要があります。本助成金の賞与・退職金制度導入コースにおいては、非正規雇用労働者を対象とした処遇改善の基準として、6か月あたり5万円以上の賞与支給、1万8千円以上の退職金積立を要件としています。
本助成金の正社員化コースの場合は、転換後に担う職務の内容や責任の程度が非正規雇用労働者と異なる前提(キャリアアップの趣旨)であることから、上述を超える額かつ企業規模等を勘案した額の支給・積立を前提とした制度であることが指標となり得ます。
※各制度について就業規則等に規定され、正社員に適用されていることが必要です。

この追加された部分は令和6年度のQ&Aの「令和6年4月以降の変更点等」のA-1に掲載されたものが転載されたものですが、とても重要な内容です。

Q-13 職務限定正社員への転換を行う場合、注意すべき点はありますか。
A-13 「職務が同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の職務に比べ限定されている労働者であること。」が必要ですが、就業規則において、この要件を満たすことが明確になっていることに加え、実態としても適用されている必要があります。なお、多様な正社員制度を規定する際の留意点としては、P39のQ40を参照してください。

なおQ-40のAでは、留意点として、「いずれの雇用区分であっても、通常の正社員と異なる賃金の算定方法等や待遇は原則として認められません」とされており、認められる例として次のものを挙げています。

  • 物価水準に応じた地域手当の支給や賃金係数の設定(現に転勤が生じていないにもかかわらず、将来的に転勤が見込まれることを以て支給する手当や賃金係数は不可。)
  • 職務に応じて、客観的に合理的と判断できる支給基準、算出方法で設定された職務手当

一方、認められない例としては、次のものが挙げられています

  • 給与の算出、支給形態が異なる(通常の正社員は月給制、多様な正社員は時給制)
  • 基本給、賞与、退職金等、賃金の算定方法が異なる (短時間正社員の労働時間の差における算定方法の違いは除く)
  • その他待遇(休日、昇給、昇格等)に不合理な差が存在する

このほか、今年度追加されたQ&Aではありませんが、以下の点についても留意してください。

  • 正社員が月給制で、多様な正社員が時給制となっている場合には支給を受けることはできない(A-8)
  • 正社員に夏期休暇や特別休暇が適用され、多様な正社員には適用されていない場合には支給を受けることはできない(A-9)
  • 正社員と多様な正社員で、賞与の算定方法が異なる場合には支給を受けることはできない(A-10)
お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

キャリアアップ助成金(厚生労働省HP)