厚生労働省がゲノム情報による不当な差別等への対応の確保(労働分野における対応)に関するQ&Aを公表しました。
本Q&Aは、「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」において、ゲノム情報による不当な差別等への適切な対応の確保に関する条項が盛り込まれたこと等をふまえ、厚生労働省では、労働分野における不当な差別を防止するための対応として、Q&Aをとりまとめたものです。
たとえば、採用選考時に応募者の遺伝情報の提出を求めることについては、求職者等の個人情報の取扱いについては、業務の目的の達成に必要な範囲内で、その目的を明らかにして収集することとする原則を示したうえで、遺伝情報を「社会的差別の原因となるおそれのある事項」に含むものであることを示しました。また、「応募者の遺伝情報を取得・利用することは、本人に責任のない事項をもって採否に影響させることにつながることになり公正な採用選考(参考1及び参考2参照)の観点から問題があることから、そうした必要性のない情報を把握してはならない」とし、問題事例については、ハローワークにおいて指導・啓発を実施するととともに、違反行為については、職業安定法に基づく改善命令、改善命令に違反した場合には罰則の対象となる可能性があるとしました(問1)。このように、厚生労働省としては、採用選考時に遺伝情報を収集することは、原則として認めないスタンスを明らかにしたといえます。
そのため、採用後、ゲノム情報を取得して提出するよう、会社から求められた場合には、「会社からの求めに応じる必要はなく、ゲノム情報を提出しないことを理由に、人事評価を低評価とするなどの不利益取扱をすることも不適切であると考えられます」とされています。これは、「健康管理のための情報」だとしても認められません(問2)。また、「ゲノム情報を提出してしまった場合に、会社がゲノム情報のみをもって解雇を行った場合、解雇の合理的な理由になるとは考えられず、一般的には解雇権の濫用に当たるとして無効になるものと考えられる」とされています(問3)。同じように、ゲノム情報を基に配置転換を命じること(問4)、ゲノム情報を基に昇格・昇給に関する不利益な取扱いをすること(問5)も、一般的には裁量権の濫用あたり、無効とされるとの見解を示しています。
このように、現時点では厚生労働省はゲノム情報を基に行う労務管理上の不利益な取扱い全般に否定的であるようです。
ゲノム情報による不当な差別等への対応の確保(労働分野における対応)(厚生労働省HP)