シフト勤務者の未払い賃金、年休に関する裁判例

今回は、令和6年3月26日東京地判についてみていくことにしましょう。本裁判は、原告従業員(ミャンマー人夫婦)が①令和2年6月1日から令和3年1月11日まで、ラーメンチェーン店を運営する被告会社の責めに帰すべき事由により就労することができなかったとして、民法536条2項に基づき同期間の未払賃金等、②年次有給休暇の申請を妨害され、精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づく慰謝料等の請求をしたものです。

初めに、問題の経緯についてです。従業員らは、平成29年3月4日に会社に雇い入れられた当初、中野店に勤務していましたが、平成29年6月からは西武新宿店に勤務していました。しかし、西武新宿店は、新型コロナウイルス蔓延に伴い令和2年3月28日から同年5月末まで休業し、6月1日に営業時間を短縮して再開しましたが、原告従業員らは西武新宿店のシフト表に組み込まれることはありませんでした。

7月以降、会社は、西武新宿店を含む都内複数の店舗のシフトを打診しましたが、従業員らのうちの夫は、西武新宿店は閉店告知が貼り出されており閉店が決まっていること、シフトの勤務時間や勤務日数が少なすぎること、店舗が遠い等の理由で受け入れられない条件であり、会社は自分たちを辞めさせるつもりだと考え、これらの打診をすべて断りました。その後、8月にも上野店でのシフトを打診しましたが、原告夫はこれを断りました。

その後、原告従業員らの代理人の弁護士は、令和3年10月22日、会社代理人の弁護士に対し、「10月29日から少なくとも20日間の有給休暇」を取得する旨を文書で通知しました。これに対して、会社の代理人弁護士は、有給休暇は出勤日にしか取得できないのでシフト確定後に申請するよう求めましたが、従業員らの代理人弁護士は、さらに同年11月22日、勤務店舗、勤務日の勤務希望を伝えるとともに、上記勤務日においてそれぞれ8日間の年次有給休暇の取得を申請しました。

会社の代理人弁護士は、同年11月24日、B弁護士に対し、被告が立て替えた社会保険料の原告ら負担分94,513円の支払を求めるとともに、シフトはその入金後に通知する旨文書で通知しましたが、会社は、その後、令和3年1月11日、従業員らが出勤の目途が立たないことから、社会保険資格喪失の手続を行いました。

従業員らは令和4年4月以降、いずれも勤務していた会社以外で再就職して就労していましたが、同年5月10日、上記の本件訴訟を提起しました。

判決では、従業員らが請求した未払い賃金の支払いについて、従業員らと会社が締結した雇用契約は、勤務する店舗や日数、時間帯を特定することなく、「別途シフト表を提出の上、個別に定める。」と定めるのみであることを指摘し、従業員らの就労義務は、被告がシフトを定めることによって、その内容が確定し、発生すると解され、被告が一定日数あるいは一定時間数のシフトを原告らに割り振る義務はないと判示しました。そのことは、たとえ従業員らが西武新宿店勤務中に、週6日の勤務や午前10時~午後6時という勤務時間帯が通例化していたとしても、契約内容が変更されたとは認め難く、また、被告が原告らの希望どおりのシフトを定めなければならない義務を負っているわけでもないとしました。

さらに、6月1日以降、会社は従業員らをシフトに組み込んでおらず、その後は複数の店舗での勤務を従業員らは、すべて断ったことから、この間、従業員らに就労義務は発生しておらず、そのことにつき会社の責めに帰すべき事由があるとはいえないとしました。その後も上野店を含む複数の店舗につき打診したシフトを断ったことについても、子の養育や原告夫の健康状態から受け入れられないものであったという主張は認めず、8月10日以降、就労していないことは、従業員らの責めに帰すべき事由によるものというほかないとし、未払い賃金の請求を認めませんでした。

有給休暇の取得についても会社がシフトを定めない限り従業員らの就労義務は発生しない以上、「就労義務の免除である年次有給休暇を取得する前提を欠いていると言わざるを得ない」として、8日間の年次有給休暇を取得する権利を有することは認めましたが、不法行為の成立は認めませんでした。

この判決は、シフト勤務者について、

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参考リンク

なし(労働判例1346号31頁掲載)

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