ストレスチェックの結果、面接指導が必要とされた労働者に対しては、面接指導の対象者を把握している医師等の実施者が、以下の方法により申出の勧奨を行いましょう。
- 実施者が個人のストレスチェック結果を本人に通知する際に、面接指導の対象者であることを伝え、申し出るよう勧奨する。
- 個人のストレスチェック結果の通知から一定期間後に、実施者が封書又は電子メールで本人にその後の状況について確認し、面接指導を申し出るよう勧奨する。
- 面接指導の申出の有無の情報を、事業者から提供してもらい、すでに事業者に対して申出を行った労働者を除いて勧奨する。
面接指導を受けるかどうかは、あくまで勧奨を受けた本人の選択によりますが、制度の実効性を増すためには、事業場において面接指導が必要と判断された労働者ができるだけ面接指導を申し出るような環境づくりが重要です。
面接指導が必要であるという評価結果を事業者が把握している労働者に対しては、申出の強要や申出を行わない労働者への不利益取扱いにつながらないように留意しつつ、事業者が申出を勧奨することも可能です。
医師による面接指導を希望する旨事業者に申し出た場合、ストレスチェック結果が事業者に提供されることなどから、高ストレスであり面接指導が必要であると評価されても申出を行わない労働者もいると考えられます。このため、面接指導の申出という正式な手続き以外でも、日常的な活動の中での産業医による相談対応を行うなど、高ストレス者が放置されないよう取り組むことが大切です。
また、その相談の中で、医師の面接指導を受ける必要があると考えられる者がいた場合は、本人に面接指導を申し出るよう促すことも大切です。なお、相談対応の中で保健師等が情報を把握した場合については、原則として労働者本人の意向に沿って情報の管理・提供がなされる必要があります。したがって、事業者に提供する場合には本人の同意が必要です。
では、次に医師による面接指導の実施するときの留意点などについてみていきます。
労働者が面接指導の申出をした場合、事業主は面接指導対象者に該当するかを確認します。面接指導の対象者は、高ストレス者として選定された者であって、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者です。対象労働者の要件の確認方法は次の通りです。
- 労働者からストレスチェック結果を提出させる
- 実施者に当該労働者が要件に該当するかを確認する
面接指導を実施するにあたっては、面接指導を行う医師を決定し、面接指導の日時・場所を調整します。
面接指導を実施する医師は、当該事業場の産業医又は事業場において産業保健活動に従事している医師が推奨されます。また、面接指導の実施を外部の医師に委託する場合にも、産業医資格を有する医師に委託することが望ましいとされています。
面接指導は精神疾患の診断や治療を行うものではありませんので、必ずしも精神科医や心療内科医が実施する必要はありませんが、専門医療機関への受診勧奨の要否も判断する必要がある場合があるため、メンタルヘルスに関する知識や技術を持っておくことが望ましいです。
面接指導は申出があってから概ね1か月以内に実施する必要がありますので、面接指導を実施する医師とも調整のうえ、実施日時の設定を行います。日時の設定に関しては、曜日や時間帯を柔軟にして、対象者が面接指導を受けやすい環境を整える配慮が必要です。
医師による面接指導は原則として対面で実施することが必要となります。ただし、労働者の心身の状況の把握や必要な指導が適切に行われるよう一定の条件を満たした場合は、衛生委員会で調査審議を行い、事前に労働者に周知した上で、ICTを活用して面接指導を実施することもできます。
面接指導においては、ストレスチェックの3項目に加えて、以下に掲げる事項について医師が確認し、本人への指導·助言を行います。
- 当該労働者の勤務の状況
- あらかじめ事業者(人事·労務担当者)から、事業場で適用されている労働時間制度や、労働者の実際の労働時間、職務内容、その他の特別な要因(例:精神的緊張を強いられる、突発的対応案件が多い、待機時間が長い等)を情報収集します。また、労働者から、勤務の状況について聞き取りを行います。
- 心理的な負担の状況
- ストレスの状況について、事業者又は労働者から提供されたストレスチェック結果を参考に、労働者と直接会話をする中で確認します。また、ストレスチェック調査票上の抑うつ症状に関する質問項目等の点数が高い場合には、抑うつ症状に関する質問を行います。
- その他心身の状況
- 健康状況や生活状況(アルコール、たばこ、運動、食習慣、睡眠時間等)について、変化傾向に留意しつつ確認します。
なお、特定の項目以外は、医師以外の産業保健スタッフの協力を得て行うことも可能です。

参考リンク
ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等(厚生労働省HP)