前回まで、ストレスチェック制度ガイドブックに従ってストレスチェック制度の全体の流れと留意点をみてきました。今回は令和3年に更新されたQ&Aのなかでも実務上重要な設問についてみていきましょう。

Q0-4 ストレスチェックや面接指導の費用は、事業者が負担すべきものでしょうか、それとも労働者にも負担させて良いのでしょうか。
A ストレスチェック及び面接指導の費用については、法で事業者にストレスチェック及び面接指導の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものです。
Q0-5 ストレスチェックや面接指導を受けるのに要した時間について、賃金を支払う必要がありますか。
A 賃金の支払いについては労使で協議して決めることになりますが、労働者の健康の確保は事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、賃金を支払うことが望ましいです(一般健診と同じ扱い)

上記のとおり、ストレスチェック制度の費用負担および受験中の賃金については、定期健康診断と同じ扱いとなります。

Q0-12 ストレスチェックの実施義務の対象は、「常時50人以上の労働者を使用する事業場」とされていますが、この50人は、どこまで含めてカウントする必要があるのでしょうか。アルバイトやパート労働者も含めるのでしょうか。
A ・・・「常時使用している労働者が50人以上いるかどうか」の判断は、ストレスチェックの対象者のように、契約期間(1年以上)や週の労働時間(通常の労働者の4分の3以上)をもとに判断するのではなく、常態として使用しているかどうかで判断することになります。 したがって、例えば週1回しか出勤しないようなアルバイトやパート労働者であっても、継続して雇用し、常態として使用している状態であれば、常時使用している労働者として50人のカウントに含めていただく必要があります。

ストレスチェックの実施義務の対象となる「常時50人以上の労働者を使用する事業場」の「常時50人以上」のカウントの仕方は、ストレスチェックの対象者だけでなく、継続的に雇用している全ての労働者を含めます。

Q2-1 ストレスチェックを健診機関などの外部機関に委託し、産業医は共同実施者となる場合、外部機関が提案した調査票や高ストレス者選定基準について、どのように産業医の意見を聴けばよいのでしょうか。また、どのように衛生委員会等で調査審議すればいいのでしょうか。
A 外部機関から提案された調査票や選定基準について、衛生委員会等で調査審議をすることが必要です。産業医には、衛生委員会等の前にあらかじめ意見を求めるか、衛生委員会等の場で意見を求めることで差し支えありません。

ストレスチェック制度では外部機関に委託する場合もありますが、その場合であっても、上記Aのとおり、外部機関が提案した調査票等を衛生委員会で調査審議する必要があります。

Q2-2 ストレスチェック制度に関する社内規程は、どのような形式で定めればよいでしょうか。就業規則に該当するのでしょうか。
A ストレスチェック制度に関する内部規程については、特に形式を問いませんので、何らかの形で、文書化していただければ問題ありません。また、就業規則に該当するものでもありませんので、労働基準監督署への届出も必要ありません。 なお、厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/)に、モデル規程の例を掲載していますので、規程を定める際には、参考にしていただければと思います。

ストレスチェック制度に関する社内規程は就業規則に該当する者ではないため、監督署への届出は不要です。

Q2-3 ストレスチェック制度に関する社内規程において、実施者、実施事務従事者、面接指導を実施する医師は、全員の氏名を規程に明記しなければならないのでしょうか。
A 社内規程において、実施者、実施事務従事者、面接指導を実施する医師を明示する目的は、労働者の個人情報であるストレスチェック結果等を具体的に誰が取り扱うことになるのかを明確にすることにあります。 従って、職名等で特定することが可能な場合は、必ずしも個人の氏名まで記載する必要はありません。また、実施事務従事者のように、個人情報を取り扱う者が複数おり、個人まで明記することが困難な場合は、例えば「●●課の職員」といったように部署名で示すことも可能です。これはストレスチェックの実施等を外部に委託する場合も同様です。 なお、社内規程では具体的に記載せず、別途社員に通知するといった記載を行い、社内掲示板に掲示する、社員全員にメールで通知するといった方法によることも可能です。

社内規程を定める場合、実施者等を明示する場合は、「具体的に誰が取り扱うことになるのか明確にするため」ですので、上記の通り、規程には個人情報を取り扱部署名を定めたり、規程以外の方法で通知することも可能とされています。

Q3-4 国が標準として示す57項目に加えて、ストレスに関連する独自の項目を加えることは問題ないでしょうか。また、質問数を数百に増やしたり、数項目程度に絞っても問題ないでしょうか。
A 「職場のストレス要因」、「心身のストレス反応」、「周囲のサポート」の3つの領域が含まれていれば、項目を増やしたり減らしたりしても問題はありません。ただし、独自に項目を設定する場合は、一定の科学的根拠に基づいた上で、実施者の意見の聴取、衛生委員会等での調査審議を行う必要があります。 なお、国が標準として示す57項目よりも少ない項目で実施する場合は、実施マニュアル(35ページ)に「職業性ストレス簡易調査票の簡略版」として23項目の例が掲載されているので参考にしていただきたいと思います。

ストレスチェック制度の調査票の簡略版があることは、今後中小企業での実施のうえで、押さえておくべきだたと考えます。なお、ストレスチェックについては、事業者が指定した実施者以外で受けるという手続きは規定されていません(Q3-5)。

Q3-7 長期出張や長期の病休のために、ストレスチェックを受検できなかった者について、どのように取り扱うべきでしょうか。
A 業務上の都合ややむを得ない理由でストレスチェックを受けることができなかった者に対しては、別途受検の機会を設ける必要があります。長期の病休者については、ストレスチェックを実施しなくても差し支えありません

長期病休社については、ストレスチェック制度を実施しなくても差し支えないとされています。

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参考リンク

ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等(厚生労働省)