不妊治療と仕事の両立支援マニュアル①

厚生労働省が「人事部門向け不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」を公開しました。本マニュアルは、企業の取組事例について最新の情報に更新するとともに、新たな企業の情報を掲載するなど、従前のマニュアルを改定したものです。そこで、今回から数回に分けて、本マニュアルのダイジェスト的に不妊治療と仕事の両立支援の基礎知識をみていくことにしましょう。

「不妊症」とは、妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交をしていたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合をいいます。不妊の原因は、女性だけにあるわけではなく、約半数は男性に原因があるとされています。また、検査をしても原因がわからないこともあります。

男性も女性も、検査によって不妊の原因となる疾患があると分かった場合は、原因に応じて薬による治療や手術を行いますが、原因がはっきりしない場合も、妊娠を目指して治療を行うことがあります。たとえば、排卵日を診断して性交のタイミングを合わせるタイミング法、内服薬や注射で卵巣を刺激して排卵をおこさせる排卵誘発法や多くの場合に精液を調整して子宮に注入する人工授精などの「一般不妊治療」、一般不妊治療では妊娠しない場合に、卵子と精子を取り出して身体の外で受精させてから子宮内に戻す「体外受精」や「顕微授精」などの生殖補助医療を行います。

不妊治療の内容や期間等は、個々人によってまったく状況が異なります。平均的に不妊治療にどれくらいの期間がかかるかについては、「一般不妊治療」と「生殖補助医療」とで大きく変わります。

「一般不妊治療」では、不妊の原因の探索から始めるので日数を要し、また治療方法もさまざまに分かれるので一概にいうことは困難です。原因探索に最短で2か月、その後の治療は「生殖補助医療」よりも結果が出るまでに期間を要し、タイミング法で約3か月、人工授精で約3か月かかることが多いので、半年から1年以内というイメージです。

一方、「生殖補助医療」のうち、体外受精に関しては、原因の探索を短めにして治療をすぐに始めますから、期間はある程度決まっています。1回の治療期間としては、検査、排卵誘発、採卵・凍結、胚移植という過程を経て、最短で約3か月、一般的には約6か月程度といえるでしょう。これを何回か行う方もいます。

不妊治療に要する通院日数の目安は、おおむね次表のとおりです。

体外受精、顕微授精を行う場合、特に女性は頻繁な通院が必要となります。また、一般不妊治療については、排卵周期に合わせた通院が求められるため、前もって治療の予定を決めることが困難な場合があります。

1回の診療は通常、一般不妊治療の場合は1~2時間、生殖補助医療の場合は1~3時間ですが、待ち時間を含め数時間を要することもあります。また生殖補助医療での採卵や男性の精巣内精子採取術(TESE)などの場合は半日から1日かかる場合もあります。一般不妊治療の場合は月経周期(25日~38日程度)に合わせて検査や治療を行うため、また生殖補助医療の場合も排卵誘発剤に対する卵巣の反応性によって月に何回通院するかは、年齢や個人の状況によって異なります。

不妊治療と仕事との両立について、治療のための時間確保のほか、治療の前に、健康上、治療上で特に配慮しなければならないことの一つに発熱があります。特に男性の精子は熱に弱く、調理場や工場など高温になる場所での労働は治療前にはあまり好ましくないといわれています。女性は、治療後に高熱が出た場合には、流産のリスクが高まる可能性があります。

女性については、ホルモン療法で卵巣過剰刺激症候群(OHSS)にならなければ、特に生活上の制約はありません。人工授精や採卵の日は、入浴できずシャワーだけになりますが、日常生活に大きな制限はありません。ただし、採卵した日は腹腔内出血しやすく、労働はしない方がよく、丸一日心身に負荷のかかるようなことはしない方がよいとされています。治療の翌日なども、急な体調変化や通院の必要性など突発的な事象によって勤務への影響が出ることもあるので、不妊治療で利用可能な休暇制度、短時間勤務制度、テレワークなどの、社内で利用可能な両立支援制度の内容や申請方法等について、予め確認しておくとよいことから、人事労務のご担当者、産業保健スタッフのサポートが重要です。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

不妊治療と仕事との両立について(厚生労働省HP)

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