雇用政策研究会において、雇用・失業情勢や働き方等に関する現状分析を行い、中長期的な観点も含めた今後の政策の具体的な方向性についてとりまとめられた報告書が公表されました。
本報告書では、2040年の労働市場において、人口減少を背景とした労働供給制約が見込まれる中、
- 多様な個人の労働参加の促進と経済成長の実現
- 人手不足の類型に応じた適切な対応
- 労働者に選ばれる職場づくり
といった観点から、①多様な個人の労働参加、②新たなテクノロジー等を活用した労働生産性の向上、③労働市場のインフラ整備等という3つの柱のもとで、必要な施策の方向性がまとめられました。
このうち①については、多様な個人の労働参加に向け、長時間労働を是正するとともに、様々な選択肢が提示できる雇用管理への転換が必要であることや、家庭等の事情に関わらず希望する働き方の実現に向け、職場・家庭の役割分担の見直しへの社会的な気運の醸成が必要であることなどが指摘されています。
②については、急速に活用が広まる生成AIによって示された結果を経験やその他の情報から適切に評価するスキルが重要であることや、生成AIをはじめとする新たなテクノロジーの活用に際しては、労使コミュニケーションの深化とテクノロジーの進展によるタスク・スキル変化のモニタリングを通じ、労働者が担うべきタスクの検討を進めるとともに、技術変化を踏まえたキャリア形成支援・職業訓練の充実により、労働者がテクノロジーに代替されないスキルを深化させることが重要であることなどが指摘されています。
③については、テクノロジーの進歩や個人の就労ニーズの多様化の中、人材育成支援(キャリア形成支援やスキルの習得)、労働市場の見える化に向けた労働市場のインフラ整備が重要であることや、企業内外において獲得したスキルが評価され、賃金等に反映され、更なるステップアップに繋がるという好循環を実現できる労働市場の機能強化が重要であることなどが指摘されています。
本報告書は、すぐに法改正が実施される内容ではありませんが、将来的な方向性を理解するうえで有用なものです。
参考リンク
雇用政策研究会報告書の公表について~多様な個人が置かれた状況に関わらず包摂され、活躍できる労働市場の構築に向けて~(厚生労働省HP)