現在、介護保険の被保険者の範囲について社会保障審議会介護保険部会で議論されています。

介護保険制度は、老化に伴う介護ニーズに適切に応えることを目的とし、被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上64歳以下の第2号被保険者としています。これあ、老化に伴う心身の変化によって生じる要介護状態等の発現率は、第1号被保険者と第2号被保険者では差があるものの、40歳以上になれば、老化を原因とする疾病による介護ニーズの発生の可能性が高くなるとともに、自らの親も介護を要する状態になる可能性が高くなることから介護保険制度により負担が軽減される等一定の受益があるため、社会的扶養や世代間連帯の考え方に立って、被保険者とされています。なお、65歳以上は原因を問わず要介護・要支援状態であれば給付対象となるのに対し、40~64歳では、老化に伴う介護ニーズという観点から、関節リウマチ等の加齢に起因する疾病(特定疾病)による場合に限定されています。

財源構成では、第1号保険料と第2号保険料の負担割合は、被保険者数に応じて按分され、平成30~令和2年度は第1号保険料が23%、第2号保険料が27%となっており、一人当たりの保険料負担が同水準になるよう設定されています。

しかし、現状では、高齢化に伴い、介護費用の総額も制度創設時から約3倍の約11.7兆円(令和元年度予算ベース)になるとともに、保険料の全国平均は6,000円弱となっており、高齢化の更なる進展に伴い、保険料水準の上昇が見込まれる状況にあります。一方、40歳以上人口は2020年代初頭から減少し、40歳以上人口に占める40歳以上64歳以下人 口の割合は徐々に低下していくことが見込まれていること、また第1子を出産する年齢が高齢化していることなど、制度創設当初に比べて、介護を取り巻く環境も変化しています。

このように、今後の人口構成の変化、介護保険制度創設時の考え方や、これまでの議論の経緯を踏まえ、介護保険制度における被保険者・受給者の範囲について、検討されています。今後、第1号被保険者と第2号被保険者の対象年齢について、どう考えるかが検討されることになります。

なお、平成19年の介護保険制度の被保険者・受給者範囲に関する有識者会議では、 「高齢者の介護保険」という現行の制度を維持するが、負担面の普遍化を図り、介護保険財政の安定化等の観点から、現行の被保険者・受給者の範囲を30歳に引き下げる。」(A類型)、「負担面だけでなく給付面も併せて「介護保険制度の普遍化」を図り、要介護状態となった理由や年齢などを問わず介護保険制度によるサービスを受給できることとする。なお、収入のない児童・学生などに対する給付は、家族給付として位置付 けることも考えられる。また、障害児に対するサービスについては、「教育、訓練」という側面が色濃いことなどを勘案して、当面、制度の 対象外とすることも考えられる。」(B類型)の2類型に分けて議論された経緯があります。

今のところ、「第2号被保険者の範囲を拡大することについては、現役世代の負担増につながるため、慎重な議論が必要」など、被保険者の拡大という方向性までは出ていないようですが、さらなる介護給付費の増大は避けられないなどの事情もあるため、その動向には注意を払う必要があります。

お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

第83回社会保障審議会介護保険部会(厚労省HP)