今回は、新加算に関するQ&Aのなかで、これまで触れることができなかったもののうち、注目すべきものを見ていくことにしましょう。
そもそも「賃金の改善」といっても、いつの時点からの「賃金の改善」なのかが問題となります。賃金改善の額は、ⓐ新加算および旧3加算を原資として賃金改善を実施した後の実際の賃金水準と、ⓑ新加算等を算定しない場合の賃金水準との比較により、各介護サービス事業者等において算出するものとされています。
ⓑ新加算等を算定しない場合の賃金水準は、原則として、初めて新加算等または交付金等(平成 21 年度補正予算による介護職員支援交付金並びに令和3年度及び令和5年度補正予算による介護職員処遇改善支援補助金をいいます。)を算定した年度の前年度における賃金水準となります。
また、介護サービス事業所等(介護サービス事業所又は介護保険施設(介護予防・日常生活支援総合事業の事業所を含みます)。)を新規に開設した場合については、新加算等を算定しない場合の賃金水準を、新加算等を除いた介護報酬の総単位数の見込額に基づく営業計画・賃金計画を策定する等の適切な方法により算出した上で試算する等の適切な方法により算出し、賃金改善額を算出することとしても差し支えないとされています(問1-1)。
なお、最低賃金を満たしているのかを計算するにあたっては、新加算等の加算額が、「予定し得る通常の賃金として、毎月労働者に支払われているような場合には、当該加算額を最低賃金額と比較する賃金に含めることとなる」としつつ、「最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行」うことが望ましいとされています(問1-6)。
「新加算等の各事業所内における配分については、介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内での柔軟な職種間配分を認めること」とされています(問2-1-1)。具体的には、「法人本部の人事、事業部等で働く者など、介護サービス事業者等のうちで介護に従事していない職員」であっても、「新加算等の算定対象となるサービス事業所等における業務を行っていると判断できる場合には、賃金改善の対象に含めることができ」ます(問2-7)。なお、旧特定加算に係る従前の取扱いと異なり、「賃金改善以前の賃金が年額 440 万円以上である職員であっても、新加算等による賃金改善の対象に含めることができ」ます(問2-1-2)。ただし、一部の職員に賃金改善を集中させること「など、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこと」とされています(問2-5)。
「賃金改善実施期間」の設定については、必ずしも「算定対象月」と同一ではなくても差し支えないとされています。そこで、通達では、次のパターンが例示されています(例:6月に算定する新加算の配分について)。
- 6月の労働時間に基づき、6月中に見込額で職員に支払うパターン
- 6月の労働時間に基づき、7月中に職員に支払うパターン
- 6月サービス提供分の介護報酬が、7月の国保連の審査を経て、8月に各事業所に振り込まれるため、8月中に職員に支払うパターン
このように、賃金改善の実施は3のように、介護報酬が振り込まれる月まで待って実施することも可能です(問1-8-1)。
なお、実績報告において賃金改善額が新加算等の加算額を下回った場合、「不足する部分の賃金改善を賞与等の一時金として介護職員等に追加的に配分することで、返還を求めない取扱いとしても差し支えない」とされています(問1-9)。