今回の記事、ざっくり言うと・・・
- 今回は、今年3月に公表された「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル【事業主向け】」「同【労働者向け】の復習
- まずは、従業員が抱えている介護の有無等の現状を、主に従業員に対するアンケート調査を実施することなどにより把握することが重要とされている
少し前になりますが、「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル【事業主向け】」「同【労働者向け】を公開しました。最近、介護離職防止に関する相談も増えてきておりますので、私自身の復習という意味でも、今回この内容について取り上げたいと思います。
まずは、現在の状況についてまとめておきましょう。
少子高齢化の進展により、平成19 年には高齢化率が21%を超え、「超高齢社会」に入ったわが国では、今後「介護」をいかに担っていくかが大き
な社会問題となっています。
さらに、兄弟姉妹数の減少、家庭内の役割分担意識の変化、共働き世帯の増加などから、働く男性も介護とは無縁ではいられない状況になっています。そして、親の介護や手助けをしている中で、あるいはその状況に直面した場合、現在の勤務先で仕事を続けることができると思うかという質問に対して、「続けられないと思う」または「わからない」と回答した人は77.4%にのぼり、介護をしながら働き続けられる見込みを持っている人は22.1%にとどまっており、企業でも、介護に関する実態把握の状況をみると、「特に把握していない」企業が46.4%と半数近くを占めており、従業員の不安や両立の状況を十分につかめていないとされています。
このような現状を踏まえて、企業に求められる従業員の仕事と介護の両立支援への取組が以下の5つです(下図)。
1.従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握
従業員が抱えている介護の有無、仕事と介護の両立に必要な自社の介護休業などの制度や公的な介護保険制度などの理解度に関する現状を、主に従業員に対するアンケート調査を実施することなどにより把握します。実態把握は、自社の仕事と介護の両立支援を進める上で出発点となるものです。
2.制度設計・見直し
上記1のアンケート調査などによる実態把握をふまえて、介護休業など自社の両立支援制度を「法定の基準を満たしているか」「従業員に周知されているか」「利用要件がわかりやすいか・利用手続きが煩雑でないか」「従業員のニーズに対応しているか」などの観点から点検し、課題があれば見直しましょう。
3.介護に直面する前の従業員への支援
従業員に対して、仕事と介護の両立に関する心構えや基本的な情報を、社内研修の実施やリーフレットの配付などにより提供します。介護は、子育ての場合と異なり、直面する時期を予測することは難しいので、従業員が介護に直面してから仕事と介護の両立に必要な基本的な情報を提供するのではなく、従業員が介護に直面する前に、直面しても離職しなくて済むような、情報提供などの支援を行うことがきわめて重要です。
4.介護に直面した従業員への支援
介護に直面している従業員に対して、自社の両立支援制度の利用支援、相談しやすい体制の整備、地域の介護サービスの利用支援などを行います。
5.働き方改革
介護のために時間制約のある従業員であっても、離職せずに就業継続できることに加えて、仕事に意欲的に取り組めるような職場環境や働き方をめざします。残業時間の削減や年次有給休暇の取得促進、仕事上の情報共有、お互いさまと支援し合える職場風土づくりが大切です。
来年1月には育児介護休業法が改正され、介護休業についても分割取得が認められるようになりますが、より自社の現状にマッチした両立支援策を検討するに当たって、参考にしてはいかがでしょうか。
参考リンク
MORI社会保険労務士・行政書士事務所(千葉県千葉市)では、日々生じる従業員に関する問題やちょっとした労働法に関する疑問、他社事例について、気軽に電話やメールで相談できる「労務相談」業務の依頼を受託しています。もちろん仕事と介護の両立支援に関するご相談、給与計算(年末調整)、労働・社会保険、就業規則、各種許認可業務等も対応します。