先日、社会保障審議会医療保険部会で今後の医療保険制度の改革の方針を示す「論点整理(案)」が示されました。そこで、今回は、その中でも企業実務に影響の大きい点として、傷病手当金と育休中の保険料免除ついて、みていくことにしましょう。

まず、傷病手当金についてです。

健康保険における傷病手当金の支給期間については、同一の疾病・負傷に関して、支給を始めた日から起算して1年6ヶ月を超えない期間とされており、その間に被保険者が一時的に労務可能となり、傷病手当金が支給されなかった期間についても、1年6ヶ月に含まれる制度とされています。このため、がん治療のために入退院を繰り返す場合等に患者が柔軟に利用できないとの指摘があったため、治療と仕事の両立等の観点から傷病手当金の支給要件等が検討事項となっていました。

これを踏まえ、論点整理案では、①治療と仕事の両立の観点から、より柔軟な所得保障を行うことが可能となるよう、傷病手当金の支給期間を通算して1年6ヶ月を経過した時点まで支給する仕組みとすること、②資格喪失後の継続給付を廃止すること、③被保険者が労務不能か否かに係る審査の適正化、年金給付や労災給付との併給調整事務の効率化を図ることについて、議論されています。

このうち①支給期間の通算化については、傷病手当金の支給期間を通算して1年6ヶ月を経過した時点まで支給する仕組みとすること、③については、各保険者で行われている審査運用のベストプラクティスの共有や裁決例のわかりやすい形での共有など、審査の効率化・適正化の方策を進めること、障害年金や労災保険等との併給調整については、関係組織との情報連携の効率化などの措置を講じることとされました。なお、②資格喪失後の継続給付については、現行制度を維持するべきとされ、改正は見送られる見込みです。

次に、育児休業中の社会保険料免除制度については、①均等分科会において、男性の休業の取得をより進めるため、特に子の出生直後の時期について、現行の育児休業よりも柔軟で取得しやすい新たな仕組みについて保険料免除の対象とすることの是非、②月末時点で育児休業を取得している場合に当月の保険料が免除される一方、月途中に短期間の育児休業を取得した場合には、保険料が免除されないこと、③賞与保険料については、実際の賞与の支払に応じて保険料が賦課されているにも関わらず、免除されており、賞与月に育休の取得が多いといった偏りが生じている可能性があることについて検討が行われました。

まず①について、保険料免除の対象とすべきとされました。これは当然のことと思われます。②については、育休開始日の属する月については、その月の末日が育休期間中である場合に加えて、その月中に2週間以上の育休を取得した場合にも保険料を免除することとされました。したがって、これまでもしばしば年末年始休暇の期間中+1日だけ育休の申請が行われることがありましたが、今回の改正が成立した後は、そのようなことはなくなることになるでしょう。なお、その際には、同月内に取得した育児休業及び新たな仕組みによる休業等は通算して育休期間の算定に含めることとされました。③については、連続して1ヶ月超の育休取得者に限り、賞与保険料の免除対象とすることとされました。

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参考リンク

第136回社会保障審議会医療保険部会 資料(厚生労働省HP)