• 働き方改革推進法の公布にあたって、各都道府県労働局長宛の通達が厚労省のHP上に公開された
  • 今回はフレックスタイム制と新しい時間外・休日労働に関する内容について取り上げる

世界の労働基準監督署からVOL003:千葉労働基準監督署

働き方改革推進法の公布にあたって、各都道府県労働局長宛の通達(H30.7.6基発0706第1、職発0706第2、雇均発0706第1)が先日厚労省のHP上に公開されました。今回はその内容について見ていきましょう。

1 フレックスタイム制

フレックスタイム制は、1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分け、出社、退社の時刻を労働者の決定に委ねるものです。フレックスタイム制に関する改正点は次のものがあります。

  • 清算期間の上限を、これまでの1か月から3か月にするとともに、使用者は、清算期間が1か月を超える場合においては、1か月ごとに区分した各期間ごとに、各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えない範囲内において労働させることができるとされました。
  • フレックスタイム制を導入するにあたっては、労働者の過半数代表者と労使協定を締結する必要がありますが、これまでは労基署への届け出は必要ありませんでした。しかし、1か月を超える清算期間を定めるフレックスタイム制の労使協定については、行政官庁への届出を要するものとされました。
  • フレックスタイム制が適用される1週間の所定労働日数が5日の労働者について、労使協定により、労働時間の限度について、清算期間における所定労働日数を8時間に乗じて得た時間とする旨を定めたときは、使用者は、当該清算期間を平均し1週間当たりの労働時間が当該清算期間における日数を7で除して得た数をもってその時間を除して得た時間を超えない範囲内で労働させることができるものとされました。
  • 使用者は、清算期間が1か月を超えるものであるときの労働させた期間が当該清算期間より短い労働者について、当該労働者を労働させた期間を平均し1週間当たり 40 時間を超えて労働させたときは、その超えた時間の労働について法定割増賃金に係る規定の例により割増賃金を支払わなければならないものとされました。

2 時間外労働の上限規制

会社は、いわゆる三六協定をし、労働基準監督署に届け出た場合においては、法定労働時間や変形労働時間制による労働時間の上限もしくは法定休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができるものとされました。三六協定においては、その記載事項が法律に格上げされ、次に掲げる事項を定めるものとされました。

  1. 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
  2. 対象期間(1年間に限るものとする。)
  3. 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
  4. 対象期間における1日、1か月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
  5. 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項

上記の「労働時間を延長して労働させることができる時間」は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限るものとされました。この限度時間は、1か月について 45 時間、1年について 360 時間(1年単位の変形労働時間制の対象期間として3か月を超える期間を定めて労働させる場合にあっては、1か月について 42 時間及び1年について 320 時間。以下同じ。)とされました。この点は、現行の限度基準から変わっていません。

さらに、現行の特別条項に当たる部分については、これまで法令による上限はありませんでしたが、今回の改正でそれが創設されました。すなわち、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1か月について時間外労働・休日労働をさせることができる時間(100時間未満の範囲内に限る。)および1年について時間外労働・休日労働を延長して労働させることができる時間(720時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができるものとされました。

また、使用者は、三六協定で定めるところによって労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であっても、次に掲げる時間について、それぞれ後段に定める要件を満たすものとしなければならないものとされました。

  1. 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、1日について労働時間を延長して労働させた時間 2時間を超えないこと。
  2. 1か月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 100 時間未満であること。
  3. 対象期間の初日から1か月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1か月、2か月、3か月、4か月及び5か月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1か月当たりの平均時間 80 時間を超えないこと。

三六協定には、対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が1か月について 45 時間を超えることができる月数(1年について6か月以内に限る。)を定めなければならないものとされました。この点は、現行の限度基準にも同様の定めがありますので、実務上大きな変更はないでしょう。

なお、限度時間等に関する規定は、建設の事業⇒施行日から5年間は適用されない(災害時の復旧・復興の事業は1か月100時間未満、2ないし6か月平均で80時間以内の規定は適用しない)などの特例が定められています。

参考リンク

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律について(厚生労働省HP,PDF)

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