令和6年雇用保険制度改正により、出生後休業支援給付および育児時短就業給付が創設されることにともなう改正省令が公布されました。そこで、今回は労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会の資料に基づいて、その内容をみていくことにしましょう。

出生後休業支援給付とは、子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げることとするものです。

出生後休業支援給付金は、①被保険者が育児休業給付金または出生時育児休業給付金が支給される休業(以下「給付対象出生後休業」といいます。)を対象期間内に通算して 14日以上取得した場合であって、配偶者が給付対象出生後休業をしたとき(当該配偶者が当該子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に通算して 14 日以上の給付対象出生後休業をしたときに限る。)、または、②被保険者の配偶者が給付対象出生後休業をすることを要件としない場合に該当するときに支給するものとされています。

そして、②の場合については、「配偶者のない者その他厚生労働省令で定める者である場合」は、被保険者の配偶者の子に該当しない者である場合等とし(則101条の37)、「その配偶者が期間内に休業をすることができない場合として厚生労働省令で定める場合」は、配偶者が日々雇用される者である場合等とされます(則101条の38)。

また、出生後休業給付金の支給申請手続は、原則、育児休業給付金または出生時育児休業給付金の支給申請手続と併せて行わなければならないものとされました。

次に育児時短就業給付金についてみてみましょう。育児時短就業給付金とは、被保険者が、2歳未満の子を養育するために、時短勤務をしている場合の新たな給付です。給付率については、原則として、時短勤務中に支払われた賃金額の10%とされています。

育児時短就業給付金については、事業主は、被保険者が育児時短就業を開始した場合に、育児時短就業給付金の支給申請書を提出する日までに、育児時短就業開始時の賃金に係る証明書をハローワークに提出しなければならないこととされました。

育児時短就業給付金は、被保険者の育児時短就業の申出に基づき、短時間勤務をした場合に支給されます。ただし、短時間勤務の終了日までに、1から4までに掲げる事由に該当することとなった場合には、その事由該当日(⑶及び⑷に該当する場合にあっては、その前日)後は、支給しないものとされます。

  1. 子の死亡その他の被保険者が育児時短就業の申出に係る子を養育しないこととなった事由として公共職業安定所長が認める事由が生じたこと
  2. 育児時短就業の申出に係る子が2歳に達したこと
  3. 育児時短就業の申出をした被保険者について、産前産後休業期間、介護休業期間等が始まったこと
  4. 育児時短就業の申出をした被保険者について、新たな2歳に満たない子を養育するための所定労働時間を短縮することによる就業をする期間が始まったこと。

育児時短就業給付金の支給申請手続は、高年齢者雇用継続給付と同様に、初めて支給を受けようとするときは、支給対象月の初日から起算して4箇月以内に行わなければならないとされました。

上記のほか、育児時短就業給付金に関しては、業務取扱要領の改訂で以下のような取り扱いが盛り込まれる予定です。

第1に、育児休業終了後引き続き時短就業をしたときの解釈について、法律上、育児時短就業給付金の支給要件は、①育児時短就業の開始前の原則2年間にみなし被保険者期間が12ヶ月以上あったとき、または、②育児休業給付金または出生時育児休業給付金の支給を受けていた場合であって、それぞれの給付金に係る休業終了後引き続き育児時短就業をしたときのいずれかを満たす場合と規定されています。このうち、②を支給要件としている趣旨は、それぞれの給付金の支給の際にみなし被保険者期間を確認しており、育児時短就業給付金の支給に当たって改めて同じ内容を確認する必要がないためです。

ところで、育児休業終了後「引き続き」時短就業をしたときとは、(出生時)育児休業終了後1日の空白もなく時短就業を開始したときと解することが基本とされているところ、(出生時)育児休業終了後14日以内に時短就業を開始する場合は、その14日以内の期間はみなし被保険者に算定されることはないため、(出生時)育児休業終了後「引き続き」時短就業をしたときと取り扱うこととされる予定です。

第2に、所定労働時間を短縮することによる就業の解釈について、いわゆる「シフト制」で働く労働者については、子を養育するためにシフトを減らして就業し、勤務実績に基づき1週間の平均労働時間が減少している場合は、「所定労働時間を短縮することによる就業」と取り扱うことが予定されています。

第3に、転職した場合であって、転職前と比較して1週間の所定労働時間が減少しているときは、「所定労働時間を短縮することによる就業」と取り扱い、被保険者期間等の要件を確認することとされる予定です。

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参考リンク

第198回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(厚生労働省HP)