• JILPTが「企業の転勤の実態に関する調査」の結果を公表
  • 正社員(総合職)のなかで、制度として勤務地限定正社員の雇用区分があるかについては、「ある」は 15.8%
  • 勤務地限定正社員の雇用区分の導入理由については、「正社員の定着を図るため」が43.2%でもっとも多い

独立行政法人労働政策研修・研究機構(JILPT)が「企業の転勤の実態に関する調査」の結果を公表しました。本調査では、雇用管理における転勤の位置づけや実態、その効果等について企業・労働者アンケート調査を行い、まとめたものです。

ここでは、いわゆる「勤務地限定正社員」に関する部分について注目してみてみたいと思います。

はじめに、正社員(総合職)のなかで、制度として勤務地限定正社員の雇用区分があるかについては、「ある」は 15.8%、「ない」が 82.3%となっています。「ない」とする企業に今後の導入予定を尋ねたところ、「ない」が 75.5%となっており、話題に上がっているほど普及が進んでいない現実があるようです。

勤務地限定正社員の雇用区分の導入理由については、「正社員の定着を図るため」が43.2%でもっとも多く、次いで、「優秀な人材の確保のため」(41.4%)、「育児・介護等と仕事との両立への対応のため」(34.9%)などとなっていました。その主な職種は、「営業職」が 34.2%がもっとも多くなっています。

では、つづいて限定社員で問題となる3つの点、すなわち、賃金差、転換制度、昇進制限についてみてみましょう。

はじめに、賃金差についてみてみましょう。勤務地限定正社員と全国転勤型との間の年収差(給与・賞与含む)は、「5~10%未満」が27.4%、「10~15%未満」が 25.3%、「処遇差はない」が 13.0%、である一方、「10%以上」は、43.8%となっています。

「10%以上」の比較的大きな年収差となっている割合は、国内拠点数が多くなるほど高くなり、広域異動が多いほど、転勤回数が多くなるほど高くなる傾向になりました。つまり、転勤の負担(範囲、回数など)が大きいほど、処遇にも年収差が大きくなる傾向にあるというわけです。

次に、転換制についてみると、全国転勤型から勤務地限定正社員への雇用区分の転換については、「転換理由があれば転換可能」が 53.8%と、本人の希望だけではなく理由も必要として運用している傾向が見られます。では、実際にどのような理由で転換が適用されたかのでしょうか。この点については、「親等の介護」が 39.3%でもっとも多く、次いで、「本人の病気」(28.6%)、「出産・育児」(25.6%)などとなっています。

最後に、管理職(課長相当職以上)への昇進可能性については、「管理職には就けない」が34.6%と全体の3分の1に上りました。管理職への昇進が可能な場合でも、「課長相当職まで可能」で38.0%で、部長・役員クラスはいずれも約10%ほどの割合でした。

このように、勤務地限定社員の現状について概観しました。全国に拠点があるなどニーズの高い企業では導入が進んでおり、家族の事情などで全国転勤が難しくなった社員の受け皿として一定の役割を果たしていることが明らかになったといえるでしょう。

参考リンク

企業の転勤の実態に関する調査(JILPT)

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