労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、職場のハラスメント対策の現状について報告されましたので、今回はその資料をもとに、ハラスメント、なかでも近年注目されるカスハラについてみていくことにしましょう。
はじめに、ハラスメントの発生状況についてみると、過去3年間に相談があったと回答した企業割合については、パワハラは64.2%、セクハラは39.5%、顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)は27.9%でした。このうち、企業がハラスメントに該当すると判断した事例の有無については、パワハラは73.0%、セクハラは80.9%、顧客等からの著しい迷惑行為は86.8%でした。このようにカスハラは3割弱の企業で相談があり、相談があったものにかんしてはその多くがカスハラと判断されたことがわかります。
次に、労働者が過去3年間に受けた顧客等からの著しい迷惑行為について、接客頻度別に見ると、「ほとんど接することがない」者の場合は5.3%であるのに対し、「勤務日はほぼ毎日接している」者の場合は17.4%となっていました。
顧客等からの著しい迷惑行為の行為者については、「顧客等(患者またはその家族等を含む)」が82.3%と大半を占めていますが、顧客以外にも「取引先等の他者の従業員・役員」が22.6%ありました。また、過去3年間に受けた顧客等からの著しい迷惑行為の内容については、「継続的な、執拗な言動」(57.3%)、「威圧的な言動」(50.2%)、「精神的な攻撃」(33.1%)が主な内容でした。
このように顧客等からの著しい迷惑行為を受けた労働者の反応についてみると、「怒りや不満、不安などを感じた」者は63.8%、「仕事に対する意欲が減退した」者は46.1%となっており、約半数の従業員にモチベーション低下がみられます。また、企業が被った損害や被害についてみても、「通常業務の遂行への悪影響」(63.4%)、「労働者の意欲・エンゲージメントの低下」(61.3%)、「労働者の休職・離職」(22.6%)など、その影響は深刻です。したがって、企業としても、カスハラ対策に取り組むことは非常に重要といえるでしょう。
実際、勤務先が顧客等からの著しい迷惑行為の予防・解決に積極的に取り組んでいる場合(12.8%)の方が、勤務先が顧客等からの著しい迷惑行為の予防・解決にあまり取り組んでいない場合(23.1%)と比べると、顧客等からの著しい迷惑行為を経験した者の割合が少ないことがわかりました。
このように、カスハラによる損失を防止し、従業員にとっても働きやすい職場環境のためにも、カスハラ対策を行うことは重要といえます。
参考リンク
第73回労働政策審議会雇用環境・均等分科会(厚生労働省HP)