令和2年5月29日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立しました。今回は、厚労省が作成したQ&Aの中から、重要なものを取り上げていきたいと思います。なお、改正の概要は次の通りです。

以下では、このうち重要と思われる点を3つ取り上げます。

第1に取り上げるのは、被用者保険(厚生年金、健康保険)の適用範囲の拡大です。この改正は、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件(現行、従業員数500人超)を段階的に引き下げ、令和4年10月に100人超規模、令和6年10月に50人超規模とします。なお、賃金要件(月額8.8万円以上)、労働時間要件(週労働時間20時間以上)、学生除外要件については現行のままとし、勤務期間要件(現行、1年以上)については実務上の取扱いの現状も踏まえて撤廃し、フルタイムの被保険者と同様の2か月超の要件を適用することとします。

第2に、在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入です。在職老齢年金制度とは、就労し、賃金と年金の合計額が一定以上になる60歳以上の老齢厚生年金受給者を対象として、全部または一部の年金支給を停止する仕組みです。改正法では、60歳台前半の在職老齢年金制度(低在老)については、60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度(低在老)について、年金の支給が停止される基準を現行の28万円から65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)と同じ47万円に合わせます。この制度改正は、令和4年4月から適用されます。

また、在職定時改定とは、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定する制度です。これまでは、退職等により厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは、老齢厚生年金の額は改定されませんでしたが、在職定時改定の導入により、就労を継続したことの効果を退職を待たずに早期に年金額に反映することで年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実が図られます。この制度改正は、令和4年4月から適用されます。

第3に、高齢期の就労の拡大等を踏まえ、高齢者が自身の就労状況等に合わせて年金受給の方法を選択できるよう、60歳から70歳まで自分で選択可能となっている年金受給開始時期について、その上限を75歳に引き上げます。繰下げ増額率は1月あたり、プラス0.7%(最大プラス84%)となります。なお、現在65歳からとなっている年金支給開始年齢の引上げは行いません。この制度改正は、令和4年4月から適用されます。

以上のように、今回の年金制度改正は実務に大きなインパクトを与えるものですので、ぜひリーフレットの内容などを確認するようにしましょう。

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参考リンク

年金制度改正法が成立しました(厚労省HP)