令和6年5月10日に雇用保険法等の一部を改正する法律が成立し、今後順次施行されることになります。今回成立した改正法は、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等のため、雇用保険の対象拡大、教育訓練やリ・スキリング支援の充実、育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保等の措置を講ずるもので、その概要は次の通りです。
- 雇用保険の適用拡大
- 雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大する。
- 教育訓練やリ・スキリング支援の充実
- 自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようにする。
- 教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げる
- 自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金を創設する。
- 育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保
- 育児休業給付の国庫負担の引下げの暫定措置を廃止する。
- 育児休業給付の保険料率を引き上げつつ(0.4%→0.5%) 、保険財政の状況に応じて引き下げ(0.5%→0.4%)られるようにする
- その他雇用保険制度の見直し
- 教育訓練支援給付金の給付率の引下げ(基本手当の80%→60%)及びその暫定措置の令和8年度末までの継続、介護休業給付に係る国庫負担引下げ等の暫定措置の令和8年度末までの継続、就業促進手当の所要の見直し等を実施する。
このうち「雇用保険の適用拡大」により新たに被保険者の対象になるのは、2023年で約506万人いるとみられます。なお、給付は別基準とするのではなく、現行の被保険者と同様に、基本手当、教育訓練給付、育児休業給付等を支給するとされています。本改正の施行は2028年10月1日です。
2については、離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限を解除するものです。また、通達の改正により、原則の給付制限期間を2ヶ月から1ヶ月へ短縮されます(ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合には給付制限期間を3ヶ月)。本改正の施行は2025年4月1日です。
また、教育訓練給付金については、具体的には専門実践教育訓練給付金(中長期的キャリア形成に資する専門的・実践的な教育訓練講座を対象)について、教育訓練の受講後に賃金が上昇した場合、現行の追加給付に加えて、更に受講費用の10%(合計80%)を追加で支給すること、特定一般教育訓練給付金(速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練講座を対象)について、資格取得し、就職等した場合、受講費用の10%(合計50%)を追加で支給することが省令の改正により盛り込まれる予定です。本改正の施行は本年10月1日です。
さらに、教育訓練中の生活を支えるための給付として、雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金が創設されます。
その他の改正内容としては、雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付を2年間延長すること、教育訓練支援給付金の給付率を基本手当の60%とした上で、2年間延長することなどがさだめられています。本改正の施行は2025年4月1日です。
参考リンク
第195回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(厚生労働省HP)