世界の労働基準監督署からVOL018:成田労働基準監督署

厚生労働省が「改善基準告示(令和6年4月1日適用)に関するQ&A」を公開しました。そこで、今回は中でも注目すべきQ&Aについてみてみましょう。

初めに見るのは、改善基準告示の適用範囲に関するものです。

1-1(Q)例えば、出勤予定の自動車運転者Aが欠勤し、運行管理者Bが代わりに運転をする場合、運行管理者Bに改善基準告示は適用されますか。
(A)改善基準告示の対象者は、法第9条に規定する労働者であって、四輪以上の自動車の運転の業務に主として従事する者をいいます。「自動車の運転の業務に主として従事する」か否かは、個別の事案の実態に応じて判断することとなりますが、実態として、物品又は人を運搬するために自動車を運転する時間が現に労働時間の半分を超えており、かつ、当該業務に従事する時間が年間総労働時間の半分を超えることが見込まれる場合には、「自動車の運転の業務に主として従事する」者に該当します。したがって、自動車運転者Aの欠勤のため、運行管理者Bが代わりに運転をする場合であって、Bが当該業務に従事する時間が年間総労働時間の半分を超えることが見込まれないときは、Bは「自動車の運転の業務に主として従事する」者には該当しません。(下線は筆者)

このように、改善基準告示が適用されるのは、実態として自動車を運転する時間が労働時間の半分を超えている等を満たす労働者です。

次に、改正された改善基準告示が適用される労使協定はいつからなのかに関するQ&Aです。これは、働き方改革関連法による新たな規制が適用される三六協定がいつのタイミングになるのかというのと同じ考え方となっています。

1-2(Q)当社では、毎年、1月1日~12月31日を有効期間として拘束時間等延長の労使協定を締結し、実拘束時間についても同じ期間で計算していますが、 ① 今回の改善基準告示の改正を踏まえ、令和6年4月1日開始の協定を締結し直さなければならないのでしょうか。 ② また、実拘束時間はどの時点から、新告示が適用されるのでしょうか。1年間の拘束時間は按分して計算するのでしょうか。
(A)令和6年3月31日以前に締結した労使協定で拘束時間等を延長している場合であって、当該協定の有効期間の終期が令和6年4月1日以後であるときは、同日開始の協定を締結し直す必要はなく、同日以後に新たに定める協定から、新告示に対応していただくことになります。例えば、令和5年10月1日~令和6年9月30日など、令和6年4月1日をまたぐ労使協定を締結している場合は、令和6年10月1日以降の協定について、新告示に対応していただくことになります。また、労使協定を締結していない場合には、令和6年4月1日から新告示に対応していただくことになります。なお、この取扱いは、法に基づく36協定の経過措置の考え方を踏まえたものです。 なお、36協定で定める時間外労働の限度時間は1か月45時間及び1年360時間となりますが、臨時的にこれを超えて労働させる場合であっても1年960時間以内となります。

次は、車中泊が「休息時間」に当たるかどうかに関する設問です。これは、実務上も実務上も問題になりやすいポイントです。Aの具体例はわかりやすいと思います。

1-5(Q)サービスエリア等で車中泊する時間は、改善基準告示における休息期間に該当しますか。
(A)改善基準告示における休息期間とは、使用者の拘束を受けない期間をいいます。勤務と次の勤務との間にあって、休息期間の直前の拘束時間における疲労の回復を図るとともに、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、その処分が労働者の全く自由な判断に委ねられる時間であり、休憩時間や仮眠時間等とは本質的に異なる性格を有するものです。 休息期間に該当するか否かは、個別の事案の実態に応じて判断することとなりますが、例えば、車両内での休息は駐車スペースが確保でき、荷物の看守義務がないなど、自動車運転者が業務から開放される場合には休息期間となります。

次回は、トラック運転者に関するQ&Aを取り上げます。

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参考リンク

自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正による改正後の解釈等について(令和5年3月31日基発0331第49号)(厚生労働省HP、PDF)