育児介護休業法の改正省令案が労働政策審議会雇用環境・均等分科会で妥当と答申されました。今回はこの省令の内容をふまえて、来年度の法改正にむけて解説します。改正法の概要は次の通りです。
このうち、義務規定でありながら内容がわかりづらいのが1.①の「3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける」とするものです。下図のように3歳までは短時間勤務制度が原則義務とされているところ、3歳以降の育児と就労の両立支援として創設されたものです。
具体的には、会社は、①始業時刻等の変更、②テレワーク等(10日/月)、③保育施設の設置運営等、④新たな休暇の付与(10日/年)、⑤短時間勤務制度の中から2以上の制度を選択して措置する必要があります。会社が措置を選択する際、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。
このうち①については省令でフレックスタイム制、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げのいずれかとされています。また、②については、1週5日の労働者については月10日以上利用することができるようにするとともに、時間単位での利用が可能であることが求められます。③については1日の所定労働時間が6時間とする措置を含むものでなければならないとされています。④については時間単位での利用が可能でなければならないとされています。
ところで、読者の中には、これまでも会社には、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、労働者の区分に応じて定める制度または措置に準じて、必要な措置を講ずる努力義務があったことを思い出す方もいるのではないでしょうか。具体的には、現行の育児介護休業法24条では、3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、育児目的の休暇、および①育児休業に関する制度②所定外労働の制限に関する制度、③短時間勤務制度、④始業時刻変更等の措置を講じることが努力義務となっていました。この努力義務規定自体は令和7年10月以降も残ります。しかし、令和7年4月に②の措置が小学校就学の始期に達するまでの子が対象となるため削除され、同年10月には上記の選択的措置義務の導入により③および④は削除されることになっています。したがって、令和7年10月以降は、これまで努力義務だった措置の一部にテレワークが追加されて選択的措置義務とされたということになります。
なお、令和7年4月施行分により、3歳に満たない子を養育する労働者について、テレワークを導入することが努力義務とされます。
会社が選択した措置については、個別の周知・意向確認が義務付けられます。周知・意向確認の方法については、①面談による方法、②書面を交付する方法、③ファクシミリを利用して送信する方法、④電子メール等の送信の方法のいずれかによるものとされています(③・④は、労働者が希望する場合に限る。)。個別周知・意向確認を行う時期については、子が1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までの1年間です。
このように、令和7年10月1日以降は会社の対応が必要となる部分が多くなります。今後公表される施行通達やQ&Aもふまえて、準備が必要です。
参考リンク
第70回労働政策審議会雇用環境・均等分科会(厚生労働省HP)