厚生労働省が令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A (令和6年11月1日時点)を公表しました。そこで、今回はこれに基づいて、今回明らかになった内容についてみていきたいと思います。

今回の改正の内容は、次のとおりです(A1)

  1. 柔軟な働き方を実現するための措置等の義務付け
  2. 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
  3. 育児のためのテレワーク等の導入の努力義務化
  4. 子の看護休暇の取得事由及び対象となる子の範囲の拡大等
  5. 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け
  6. 育児休業取得状況の公表義務を300人超の企業に拡大
  7. 介護離職防止のための個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置の義務付け
  8. 次世代育成支援対策推進法の有効期限の延長
  9. 育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務付け 等の措置を講ずるものです。

このうち、令和7年 10 月1日に義務化される「柔軟な働き方を実現するための措置」について、「3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者が、柔軟な働き方を活用しながらフルタイムでも働ける措置も選べるようにするためのもの」としたうえで、事業主が過半数労働組合等からの意見聴取の機会を設け、職場のニーズを把握した上で、①始業時間等の変更、②テレワーク等(10日以上/月、原則時間単位で利用可)、③保育施設の設置運営等、④労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与」(10日以上/年、原則時間単位で取得可)、⑤短時間勤務制度の中から2つ以上の制度を措置し、労働者はその中から1つ選択して利用することができるものとされました(A2-1)。

上記①から⑤までのうち、始業時刻等の変更は、フレックスタイム制または始業終業時刻の変更の2つの措置がありますが、どちらも選べる制度を設けた場合、措置を2つ設けたことにはならず、措置義務を果たしたことにはなりません(A2-8)。

2つの措置を選択するときに、「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、事業所単位や事業所内のライン単位、職種ごとに措置」することも可能とされています(A2-4)。また、正規・非正規雇用労働者間で異なる措置を選択して措置する場合についても可能ですが、「職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情のうち、その待遇の性質及び目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理な待遇差に当たらないようにすることが求められるとされています(A2-6)。

既に社内で導入している制度がある場合には、「当該制度を「柔軟な働き方を実現するための措置」として選択して講ずることは可能」とされています。ただし、「職場のニーズを把握するため改正後の育児・介護休業法第23条の3第4項に基づき、過半数労働組合等から意見を聴取する必要があります」。

なお、労働者の個々の事情による求めに応じて措置することまで義務とはされていませんが、「労働者の職種や配置等から利用できないことがあらかじめ想定できるものを措置することは、事業主が措置義務を果たしたことには」ならないとされています。

ところで、上記の「柔軟な働き方を実現するための措置」を講ずるにあたっては、「施行日に当該措置が講じられるよう、施行より前に過半数労働組合がある場合は過半数労働組合、過半数労働組合がない場合は過半数代表の意見を聴く等の必要があります」(A2-2)。

意見聴取の方法については、法令上の定めはありませんが、厚生労働省としては「丁寧にコミュニケーション」を求めています。また、育児当事者等からの意見聴取や労働者へのアンケート調査の活用も並行して行うことが望ましいとしています。ただし、「労働者の意向等を十分に検討した上であっても、事業の性質等から労働組合から聴取した意見に沿えないような」場合には、その判断に至った事情等について説明することが考えられます(A2-3)。

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参考リンク

育児・介護休業法が改正されました~令和7年4月1日から段階的に施行~(厚生労働省HP)