育児介護休業法の改正にともなう省令の改正案についてパブリックコメントの募集が開始されました。そこで、今回は令和7年10月1日施行の改正省令の概要をみていくことにしましょう。
はじめに、改正法では、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付けるとともに、当該措置の個別の周知・意向確認が義務付けられました。
改正省令案では、このときの、仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取について、労働者の意向の確認は、面談、書面の交付、ファクシミリを利用しての送信または電子メール等の送信(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)によって行われなければならないものとされました(ファクシミリを利用しての送信または電子メール等の送信については、労働者が希望する場合に限ります)。なお、妊娠・出産の申出時の意向聴取についても同様です。
次に、「子の出生の日以後に発生し、又は発生することが予想される職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資するものとして厚生労働省令で定める就業に関する条件」は、次のとおりとされました。
- 始業および終業の時刻に係ること
- 就業の場所に係ること
- 育児休業に関する制度、子の看護等休暇に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、時間外労働の制限に関する制度、深夜業の制限に関する制度、育児のための所定労働時間の短縮措置、育児休業に関する制度に準ずる措置、在宅勤務等の措置または始業時刻変更等の措置、法第23条の3第1項の規定による措置その他子の養育に関する制度又は措置を利用することができる期間に係ること
- その他職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資する就業に関する条件
次に、「柔軟な働き方を実現するための措置」の各措置の具体的な内容については、「始業時刻変更等の措置であって厚生労働省令で定めるもの」としてて、当該制度の適用を受けることを希望する労働者に適用される次に掲げるいずれかの方法により講じなければならないこととされました。
- 労働基準法32条の3第1項の規定による労働時間の制度(フレックスタイム制)を設けること
- 1日の所定労働時間を変更することなく始業または終業の時刻を繰り上げまたは繰り下げる制度を設けること。
また、在宅勤務等の措置は、次に掲げる要件を満たさなければならないとされました。
- 1日の所定労働時間を変更することなく利用をすることができること
- 利用をすることができる日数は、次に掲げるものであること
- 1月につき1週間の所定労働日数が5日の労働者については、10労働日
- 1週間の所定労働日数が5日以外の労働者については、1を基準とし、その1週間の所定労働日数に応じた労働日
- 時間単位(1日の所定労働時間数に満たないものとする。)であって、始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続して利用することができること。
なお、上記3について、時間単位で利用する在宅勤務等の措置1日の時間数は、1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1日平均所定労働時間数とし、1日の所定労働時間数又は1年間における1日平均所定労働時間数に1時間に満たない端数がある場合は、1時間に切り上げるものとする。)とされています。
第3に、「育児のための所定労働時間の短縮措置」については、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければならないものとされています。
第4に、「労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための休暇を与えるための措置」は、次に掲げる要件を満たさなければならないものとされました。
- 1日の所定労働時間を変更することなく利用をすることおよび1年につき 10 労働日の利用をすることができるものとすること
- 「労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための休暇」が取得できる厚生労働省令で定める1日未満の単位は、時間(1日の所定労働時間数に満たないものとする。)とすること
なお、1日未満の単位で取得する休暇1日の時間数は、1日の所定労働時間数とされました(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1日平均所定労働時間数とし、1日の所定労働時間数又は1年間における1日平均所定労働時間数に1時間に満たない端数がある場合は、1時間に切り上げるものとする。)。また、始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続するものとされました。
第5には、「労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置として厚生労働省令で定めるもの」の内容は、「保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与」とされました。
このように「柔軟な働き方を実現させるための措置」には、様々なメニューの中から、自社に合ったものとすることになります。
次に、労使協定で対象から除外することのできる労働者に関しては、「第1項に掲げる措置を講じないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの」は、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者とされました。
次に、3歳になるまでの適切な時期の面談等については、労働者が対象措置のいずれを選択するか判断するために適切なものとして厚生労働省令で定める期間は、当該労働者の子が2歳 11 か月に達する日の翌日までの1年間とし、法第23条の3第5項の「厚生労働省令で定める事項」は、対象措置、対象措置に係る申出の申出先ならびに所定外労働の制限に関する制度、時間外労働の制限に関する制度および深夜業の制限に関する制度とされました。また、「厚生労働省令で定める事項」を知らせる方法および「労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置」は、面談、書面の交付、ファクシミリを利用しての送信または電子メール等の送信(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)とされました。なお、ファクシミリを利用しての送信または電子メール等の送信については、労働者が希望する場合に限るとされています。
参考リンク
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則等の一部を改正する省令案に関する御意見の募集について(e-gov)