世界の労働基準監督署からVOL020:旧土浦労働基準監督署

10月から最低賃金が改定されます。今年の引き上げ額は全国加重平均額で28円となり、コロナ禍にもかかわらず大幅な引き上げとなりました。これは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額です。改定額の全国加重平均額は930円(昨年度902円)となります。今後も最低賃金は当程度の引き上げは続くものと思われます。そこで、今回は最低賃金の基礎的な知識について、今一度見直したいと思います。

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、会社は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。最低賃金は強行規定ですので、仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。

最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。地域別と特定(産業別)の両方の最低賃金が同時に適用される労働者には、会社は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。

最低賃金は、 誰がどの県の最低賃金を適用されるのかというと、まず「誰」については、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、セーフティネットとして各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。次に「どの県の」については、労働者の属する事業場がある都道府県の最低賃金が適用されます。コロナ禍で増加したテレワークを行う労働者についても、テレワークを行う場所の如何に関わらず、テレワークを行う労働者の属する事業場がある都道府県の最低賃金が適用されます。なお、派遣労働者には、派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の最低賃金が適用されます。

次に、支払っている賃金が最低賃金を超えるかどうかのチェックの方法を見ていきましょう。その前提として、すべての地域別最低賃金と大部分の特定(産業別)最低賃金については、時間額で定められていますので、月給制や日給制の労働者については、その給与の時給額を計算する必要があります。時間額の算定にあたっては、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金であることから、実際に支払われる賃金から以下の賃金を除外したものを基礎とします。

【最低賃金の対象とならない賃金】

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  4. 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  5. 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  6. 精皆勤手当、通勤手当および家族手当

そのうえで、給与の支払い形態に応じて、次の計算で時間額を算出します。

  1. 時間給の場合  時間給≧最低賃金額(時間額)
  2. 日給の場合   日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
    • ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額)
  3. 月給の場合   月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
  4. 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合  出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額≧最低賃金(時間額)
  5. 上記1〜4の組み合わせの場合
    • 例えば基本給が日給制で各手当(職務手当等)が月給制などの場合は、それぞれ上の2、 3の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)と比較します。
お問い合わせはお気軽に。043-245-2288

参考リンク

最低賃金特設サイト(厚生労働省HP)