現在厚生労働省では、サービス残業などの労働基準関係法令違反が繰り返し認められるなどの場合に、ハローワークが求人申込みを一定期間受理しないことができるとする制度を検討しています。法改正はまだ行われていませんが、法改正につながる報告書案が公開されましたので、これを参照してみたいと思います。
まずは、この制度を提案する部分を引用します。
現在、公共職業安定所は、個別の求人の申込み内容が違法である場合等を除いてすべての求人申込みを受理しなければならないこととされている。
(中略)
そのため、若者が就業を継続していく上で問題を抱えることとなると判断される賃金不払残業等の労働基準関係法令違反が繰り返し認められる場合や男女雇用機会均等法及び育児介護休業法違反に基づく公表の対象となった場合等は、公的な機関としての公共職業安定所においては、当該求人者からの求人申込みを一定期間受理しないことができるとすることが適当である。
このように、次の場合に、一定期間ハローワークで求人を出すことができなくなる制度となる見込みです。
- 労働基準関係法令違反が繰り返し認められる場合
- 男女雇用機会均等法違反に基づく公表の対象となった場合
- 育児介護休業法違反に基づく公表の対象となった場合
報告書案と同時に公開された資料によれば、 1では、同一条項の違反について、繰り返し(例:過去1年間に2回以上)、是正指導を受けた場合で、賃金、労働時間等関係の違反の場合を対象とすることを想定しているようです。また、2については、性別を理由とする差別の禁止、妊娠等を理由とする不利益取扱いの禁止、セクハラ等、3については、育休申出に応じる義務、育休を理由とした不利益取扱いの禁止等の規定に違反し、企業名を公表された場合が想定されています。
そして、不受理とできるのは、法違反が是正されるまでの期間に加え、一定期間(6ヶ月経過するまでの期間)と記載されています。
なお、実際には現時点でも求人窓口では、いくつかの指導が行われています。たとえば、いわゆる固定残業手当を導入している場合には、求人票に「固定残業代には○時間分の残業手当を含む。○時間を超えた場合は別途残業手当を払う」旨を記載するよう指導が行われています。
私も求人票を提出しに行った際にこの点を指導され、ずいぶん細かく見るようになったなあなんて思っていましたが、今回取り上げたような制度が導入されれば、最悪の場合求人票の受理を拒否されることになるわけですから、労働法令遵守はますます重要になっていくでしょう。
■関連リンク
第59回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会(厚生労働省HP)
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