労働政策審議会の部会が、労働者派遣法制度の改正に向けた「論点整理」を公開しました。今回は、その中で重要と思われる点を取り上げます。

第1点は、事業運営に関する情報提供です。論点整理では、派遣元事業主による情報提供の法的義務がある全ての情報について、原則として、常時インターネットの利用により広く関係者に提供することが適当であるとしています。その際の支援策として、人材サービス総合サイトの活用により、派遣元事業主による情報提供などが挙げられています。

第2点は、雇用安定措置です。これについては、雇用安定措置について派遣元事業主から相談を受けていないと回答した派遣労働者が約半数おり、希望に応じた措置を講じるという点では、課題
が見られたことをふまえ、「希望の聴取結果」を派遣元管理台帳の記載事項に追加することが適当としています。

第3に、報道等で見直しの可能性も指摘されていた日雇派遣です。しかし、論点整理では、「日雇派遣の原則禁止は引き続き維持」することが示されました。また、年収要件についても、当面、現行制度を維持することが適当とされています。このように、日雇い派遣の解禁は、次の改正では見送られる公算が高いといえるでしょう。

一方、日雇派遣が可能な例外業務については、「適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務」に該当するかどうかについて、引き続き個別に検討を進めることが適当とされており、業務単位での規制緩和はあるかもしれません。

最後に、書類の保管についてみてみましょう。労働者派遣契約については、省令上、「書面に記載しておかなければならない」とされていますが、電磁的方法による保存を認める方向性が打ち出されました。また、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳の保存期間については、労働基準法の改正により、賃金台帳等の保存期間が5年に延長されるととともに、当分の間は3年とされたことを踏まえ、この経過措置に係る今後の検討状況を見据えつつ、派遣元管理台帳等の保存期間についても延長の検討を行うことが適当とされました。したがって、賃金台帳の保存期間と合わせて延長されることが見込まれます。

以上のように、現時点では次の派遣法の改正は小規模なものとなりそうですが、コロナ禍で派遣労働者の雇用の不安定さがさらに問題化することも考えられますので、引き続き動向を注視したいと思います。

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参考リンク

労働政策審議会(職業安定分科会労働力需給制度部会)(厚生労働省HP)