療養時の標準報酬月額の特例措置

現行の制度においては、療養等と仕事を両立するため就労調整を行う場合、こうした調整によって報酬が急減し、急減後の報酬の総額を基にした標準報酬月額が、従前の標準報酬月額に比べて2等級以上低下する場合であっても、通常の随時改定の取扱いによる場合、標準報酬月額が改定されるまでには、固定的賃金の変動があった月から3か月を要するため、それまでの間、従前の標準報酬月額が維持されることになります。
そこで、令和9年1月1日から療養、育児または介護と仕事を両立するため、本人と職場の合意の下で、所定労働時間の短縮や時間外労働の抑制等の就労形態等の調整(就労調整)が行われ、その結果として、標準報酬月額が2等級以上低下し、かつその状態が3か月以上続くことが予め見込まれる場合は、報酬が減少した月の翌月から標準報酬月額を改定できるようになります(特例措置)。特例措置により、より速やかに、現状に適合した形で、標準報酬月額を改定できるようにすることになります。それでは、以下で特例措置の詳しい内容についてみていきましょう。
特例措置では、適用事業所の事業主から、以下の対象者について、以下に定める手続の方法により、療養等と仕事を両立するための就労調整を行うことにより報酬が急減し、急減後の報酬の総額を基にした標準報酬月額が、従前の標準報酬月額に比べて2等級以上低下し、かつその状態が3か月以上続くことが予め見込まれるものとして届出があった場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、特例措置により、「報酬減となった初月」に受けた報酬の総額を、新たな標準報酬月額として改定できる取扱いとなります。
ここで、「報酬減となった初月」とは、療養等を理由とした就労調整を行い、標準報酬月額が2等級以上低下し、かつその状態が3か月以上続くことが予め見込まれるものとして事業主が届け出た月をいいます。
また、報酬減となった初月の報酬支払の基礎となった日数(支払基礎日数)については、療養等と仕事を両立するための就労調整により勤務しなかった日(報酬の支払の有無は問わない。)がある場合であっても、所定労働日数に変更は無く、かつ使用関係が継続しているときは、当該勤務しなかった日も支払基礎日数として取り扱われます。そのうえで、原則として支払基礎日数が 17 日未満となる場合は、当該月は特例措置の対象外となります。なお、報酬減となった初月の全部にわたって勤務せず、報酬が一切支払われなかった場合は、療養等と仕事を両立しているとは言い難いため、当該月は特例措置の対象外となります。
ただし、就労調整が終了・縮縮したことにより報酬が増加し、増加後の報酬の総額を基にした標準報酬月額が、その者の標準報酬月額(特例措置による改定後のもの)に比べて2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、速やかに、その内容を届け出た上で、「報酬増となった初月」に受けた報酬の総額を、新たな標準報酬月額として改定するものとされています。「報酬増となった初月」は、療養等を理由とした就労調整が終了し、標準報酬月額が2等級以上上昇した月とされています。報酬増となった初月の支払基礎日数については、報酬減となった初月の支払基礎日数の取扱いと異なり、報酬支払いが無かった日は、支払基礎日数として取り扱われません。
なお、特例措置による場合、標準報酬月額が減少するため、傷病手当金等に影響が生じることについて、対象者に十分説明の上、予め同意を得ておく必要があるとされています。
特例措置の対象となるのは、社会保険加入者のうち、次のいずれにも該当する者であること。
- 療養等と仕事を両立するための就労調整が行われていること。
- 当該就労調整により報酬が急減し、急減後の報酬の総額を基にした標準報酬月額が、従前の標準報酬月額に比べて2等級以上低下し、かつその状態が3か月以上続くことが予め見込まれること。
- 特例措置による改定を行うことについて、対象者が書面で同意していること。
適用事業所の事業主が、次の届出書類にの申立書兼同意書を添えた上で、日本年金機構の事務センター(又は年金事務所)に提出することとされています。
- 被保険者報酬月額変更届(特例改定用)(別紙1-1、1-2)
- 申立書兼同意書(別紙2)
その他の留意点には次の3つがあります。
① 特例措置による改定後の随時改定
特例措置による改定後であっても、通常の随時改定を行う場合には、当該随時改定の届出(被保険者標準報酬月額変更届)が必要となることに留意することとされています。
② 特例措置による改定後の定時決定
特例措置による改定後であっても、定時決定は行う必要があるため、被保険者標準報酬月額算定基礎届の提出が必要となることに留意することとされています。
③ 健康保険及び厚生年金保険の関係
事業主からの申立書において、健康保険および厚生年金保険双方で同様の特例改定の手続を行う旨のチェック欄を設けているため、この点を確認し、チェックがない場合には、事業主に対し申立書を返戻した上で、健康保険組合及び日本年金機構に対して同時に手続を行うことが求められます。



